２２話 ページ24
「今はランの言う通り、船長としての役割に徹することにしよう。そのためには状況把握だが......我らの故郷は、リゾート建設予定地として扱われている。すでに工事に着手しているとも聞いたが、職人たちはどうしているんだ？」
「すでに避難されました。......それから、民の集合墓地に行く余裕ならあるかと。Aはかつての玉座にいる、そんな予感がするのです。墓地は島の離れにあるようですよ。」
「そうか。」
生き残った四人が覚えている限りの、民の墓の数。私たちが不器用ながらも土に埋めた彼らの墓は、後に誰かの手によって建て直され、墓石も作られたようだ。折角なら、とコビーが提案してくれたようだが、あまり墓に興味を示せなかった。
薄情者と言われても仕方がない。確かにあそこには家族だったものを埋めた覚えがあるが、それを愛した覚えも、愛された覚えもない。私が埋めた知らない子だと思った遺体はAだったが、彼女の魂も墓地に存在しない。行く意味など無に等しいだろう。しかしせっかくの提案を無下にしてしまってはいけないと思い、仕方なく墓地に向かうことにした。
......一番の理由は、ランだ。目の前で本物のAを失った苦しみは、家族でも晴らすことはできない。私でさえ知らないランと彼女の繋がりのためにもと、墓地に行くことを受け入れたのだ。決してそこに、私の意思があるわけではない。
「行こう。もう骨もないだろうが、花を手向けるぐらいはできる。お前たちが愛した家族、友人もいることだしな。」
なのに。この感覚はなんだろうか。何かが自分の心に針を刺すような、そんな奇妙な痛み。自分にそんな意思はないと思っても、本当はあるのだろうか。
彼女の魂が眠らない墓地に、思い入れなど。
「(いいや、違うな。これは罪の痛みだ。彼女の死を目にしたにも関わらず、私はそれを受け入れなかった。今日までの痛みを全て、私の中のAに肩代わりさせてしまった。今もそうしている。今さらレイナとして、どう振る舞えばいい？)」
「......レイナも、今こそ受け入れるべきかもしれませんね。」
「ラン......気付いていたのか。」
「はい。あなたの右腕として、父として、今こそあなたの道を示しましょう。Aの死を受け入れるために、今一度墓地へ向かいましょう。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
