２１話 ページ23
「レイナ、持ってきましたよ。でも飲みすぎは」
「寄越せ！！！」
「......船長がそう仰るのなら。ですが、声を荒げてはなりません。子供が泣いてしまう。」
ランから何かの薬を奪い、それを水と一緒に飲み干す。
建国の日より、否。それよりも前から同じような日々だ。精神に限界が来ると感じれば、何でもいいからとにかく薬を飲み干す。そのために島に着いた際は、店で見つけ次第なんでも買うことにしている。
不幸か幸運か、それとも薬には元々そういう効果があるのか。私が買った薬は、必ず荒ぶる心を落ち着かせてくれる。ただ日に日に私の体は薬に慣れていき、その分量も増えていく。この体になっても、いつもの量を飲まなければ落ち着かなくなっているほどだ。その度に家族を心配させる日々に、それを生み出す自分にうんざりしている。
......ある可能性が過ってしまった。私の体だったものに移ったAは今、"薬の反動が来て"いないのか。もしそうなら、彼女は今。
「(飲んでも考え事ばかり......もう、目を閉じたい。だが目を閉じたら、守るための人生に意味がなくなる。)」
「コビー大佐より言伝です。次なる目的地にて、先に調査に向かった海兵がいるのですが......全滅しました。一歩でも足を踏み入れたら殺すと、彼女の声も入っていたようです。」
「......やっぱり。」
「え？」
予想通りか。意図して邪魔する者には死を与える、何も知らずに邪魔する者には死を与えず。私が思うAならそうしたはずなのに、無関係の海兵を殺した。カンヌに連れていかれてから、自分の体の変化を考える余裕など一切なかっただろう。
そのせいで対処が遅れ、荒ぶっている。目に入るものすべてを殺し、消し去るという選択を常に選び続けている。それもただの憶測に過ぎないのだが。
......だって、私のAはあくまで私視点から作られたもの。もしかしたら現在の彼女の殺戮行為が本音という可能性だってあるんだ。
「なんでもない。声を荒げてすまなかった、ラン。私は私の言葉に、自信が持てなくなってきてね。今の彼女を理解できるのか、それすら自信がないんだ。あの島に着いても、私はただのお荷物かもしれんな。」
「そんなことはありません。船長はいつも通り、我らに指示をくださればよいのです。今度こそ、あなたを守らせてください。」
「......ありがとう。本当なら、私たちがお前を守る側だったのに。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
