２０話 ページ22
船上は退屈なものだと、改めて思い知る。ずっと海兵と訓練を続けていたせいか、体を動かさないとどうにも暇でしょうがない。だから、こういう退屈な時間は、家族の愛を知る勉強をすることにした。まずは息子をそれらしく愛してみる。
撫でる、抱きしめる、頬を指で突っついてみたり。可愛らしいものだが、私が息子に抱いているこれは、きっと家族としての愛じゃない。ただの物としての愛だ。レイナとしての昔なんて微塵も思い出せないけど、私の家族もろくでなしだったのだろう。記憶にいる誰かは、助けを求めても無視していた。
レイナも、Aという自我も、この子の愛し方を知らない。でも名前をつけて、死ぬ気で守るって想いだけは確かにある。
............想いがあるだけだ。どうせその日が訪れたら、息子など簡単に捨ててしまうのだろう。
「いい加減名前を決めなさい。」
「レイナとめっちゃ相談した！名前候補なら百個あるんだ！」
「明日までに半分に絞りなさい。戦闘丸さんに頼りたいところだったが、あの人もボルサリーノさんもどっかに行ってしまったし......モモンガ中将、ちょっと手を貸してください。この親バカの頭を殴る手伝い。」
スレットのように、真剣というほど名前で悩んだことがない。ランのように、子供のためを想ったことがない。ロジャーのように、自分から子供の世話を引き受けたことがない。誰も引き受けれないときに私が世話する、それだけだ。家族愛を知る日は、まだ遠く感じる。
それでも私も勉強はしている。家族を学ぶために本を読み、周りの海兵から家庭のことを聞き、それをとにかく覚えて、同じようなことをやってみたりはしている。
それに子供はちゃんと、私を母親として認識していた。私に抱えられたとき、嬉しそうに笑うんだ。私もその瞬間が幸せに感じる。
ただ、幸せを感じても愛が違うんだ。おかげで幸せを感じると同時に、息苦しくもなるよ。
無意識に、自分の喉を引っ掻いてしまうほどに。
「......いけない、いけない。この体は、あの人のものなのに。今はまだ悩む時じゃない......そのはずだ......耐えろ、レイナ。全部飲み込め。吐き出すのなら、誰かを殺すときに。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
