１２話 ページ14
昔、スレットが約束を交わした相手。彼女が初恋だった。最初はその心に気付けないまま十年以上が経過し、ある夜にストレスの発散目的で彼女と交わり、Aの妊娠を悟った彼は罪悪感と共にその心に気付く。
だが妊娠したそれは初恋相手のAではなくレイナだ。彼は面識すらない女性に妊娠させていた。それが偽者であったという事実に気付いてからも、今日まで現実から目を逸らしていたのだろう。今、私が問いを投げたことで、初めて現実に直面したのだ。要はどちらを救うかという話になる。
二人同時に助けを求められたとき。二人の息が絶えようとしたとき。すべてを乗り越えたとしても、魂の入れ換えの儀式が行われるとして、君はその儀式を止めるのか。静観するのか。スレットの顔が徐々に青ざめていく。
「お、れ、どっちも、う......うぅ゛......」
「答えは二択だよ。そんなに難しいかな？」
「オ゛ェ゛...ッ」
思考することすら拒絶したのか、彼の服が濡れてしまうほど吐瀉物が出てきた。この眺めは実に心地がよい。互いに運命の人を取り合う、その資格があるとは思えないが。
ああそうだとも。私も彼女に見惚れてしまったのだ。遠い昔から、今日に至るまで。何度潰されようが、必ず立ち上がる私の英雄。彼女が本物の英雄であると、私は証明してみたい。この作家人生にかけて、彼女の人生を一冊の本にまとめてみたい。願わくば、永遠にその姿を間近で眺めてみたい。
だから、この男は邪魔だ。早々に潰れてくれるのなら助かる。そして、私が二人をこの手に。
「選ぶのが嫌なら、ヴィアちゃんでも」
「それは、嫌だ。」
「ん？何故？」
「......二人のことが好きだ。一人しか愛せず、助けれないのも知っているよ。それなら俺は、レイナを選ぶ。お前みたいなぽっと出のクソ野郎にくれてやるもんか。」
「............その言葉が本当か嘘か、見定めるとしよう。もしその言葉が本当なら、私は彼女だけで我慢しておくよ。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
