１０話 ページ12
とうとう本部へ足を踏み入れた。私たちを待つのは歓迎の声じゃない。憧れの瞳もない。そこにあるのは当然、犯罪者への蔑みの目だ。どうして海賊を倒すべき正義の本部に、海賊が当然のように来ているのか。以前まで賄賂で交渉していた件もあり、その眼差しはいっそう強いものになっている。
サカズキは出てこない。その代わり、代表として姿を見せたのはセンゴク。元帥を引退してからのことは詳しくないが、自由な生活を満喫しているのか、以前までの厳格なイメージとはかけ離れている。話し合いも楽に終わりそうだと思ったが、途端にセンゴクの目付きが変わる。どうやらこちらをまだ警戒し、これから何か試されるかもしれない。
「絶対に話が拗れるから却下。上司がよくても、部下がよくないって話か。上の者も大変だな。特にサカズキ、彼はこの同盟に賛同しない側の人間だったはず。彼と同じ気持ちで、今すぐ私たちを殺せたならと思う海兵もいることだろうさ。だが、今日だけでも対等な人間として話し合おう。」
「......その通りだな。お前たちは仕事に戻れ。コビーは彼女たちを客間へ案内してやってくれるか？」
だがこちらが提案すると、あっさり引き下がる。それはそれでどうかと思うが、それだけ上の者はこちらを信頼しているということなのだろう。
それか、海軍が優位な立場にある。戦力差はもちろん、彼らの情報網も侮れない。コビーから聞いた話によれば、カンヌがつい先刻まで私たちと同じ島にいたらしく、私の体だったそれの四肢を落とし、また行方を眩ましたらしい。元に戻っても車椅子生活か、義手義足生活になるのかと思うと胃が痛くなるものだが。
コビーに案内されるがままに、私とランは客間へと向かう。後程ロジャーとスレットが船番を交代し、ロジャーが息子を連れて合流するとも聞いた。戦力は十分だと思うが＿＿＿＿＿＿一応警戒しておかねば。
「ごめんなさい、緊張させてしまって。でも共に戦いたいという気持ちは本当です。カンヌ、そしてリリー・カーネーション。この二つの存在を......倒すまでは。」
「かつての恩師を殺すのだろう、辛い思いをさせてすまない。私たちだけで解決できればよかったが、事態が大きくなりすぎた。」
「彼女の凶行、そしてこれまでの犯罪を見抜けなかった、我々の責任でもあります。......詳細は客間についてから、書類をお配りします。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年2月19日 3時
