月が綺麗だなんて・エース ページ1
ある夜月が輝く日に。
本を読んでいた。ワノ国の本らしい。
恋物語は普段は読まないのだけれど、恋仲のエースがいるから、少し興味が出た。
私たちは海賊。歪な愛の形、という訳では無いのだけれど、普通では無いでしょう。
だからこうして、普通の恋愛って何なんだろうって思って、鯨を模した船に腰掛けて1人寂しく本を読んでいる。
「月が綺麗ですね」
一見何事もない台詞に聞こえるけれど、これには「愛してる」という意味があるらしい。
どうなっているのかは馬鹿な私には全然分からなかった。
やっぱりワノ国は不思議だな。
興味が赴くままにそのまま本を読み進めて言った。
流石文豪の作品と言ったところか、思わず読み言ってしまった。
ああ、私も一度でいいからあんなセリフを言われてみたいな、そう思いながら夜月を眺めた。
夜月を見ていると過去のことやこれからの事を考えてしまって、感傷に浸るのに夢中だった。
「よう、A。」
「うわっ！！」
恋仲のエースが話しかけてくる。
まあ、破天荒な彼だから、普通に話しかけるのでは無くいきなり近付いてくるのだが。
普通に心臓に悪い。
「じゅ、寿命が縮むかと思ったよ！いい加減もっと普通に話しかけてよ！」
そう言えば、
「はは、悪ぃ悪ぃ」
なんて冗談めかして言った。
「もー、海に落ちるかと思ったんだから！」
「……」
少し拗ねたようにそう言うと、彼は私の顔を見て目線を離さない。
「な、何？」
「お前ってさ、いつもは驚かそうとしても驚かねぇのに、今日は驚くんだな。」
不思議そうに彼は私を見つめるばかりだった。穴があきそうなくらい凝視されて、少しだけ恥ずかしかった。
「うーん、さっきはエースの事、考えてたからかな。」
なんて意地悪そうに笑ってみたら
「愛してる！！」
恥ずかしげもなくそう言われて、戸惑いつつも嬉しかった。
最初は「月が綺麗ですね」なんて言われてみたいって思ってたけど、エースに限ってそれはないか。
最も、エースがエースらしく私に愛を伝えてくれた事が嬉しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊 | 作成日時：2020年12月2日 20時
