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沈みかける夕日が、静寂と闇を招き入れる。 まるで、人の心を表すかのように――
【死亡届】と、心の整理がつかない内に、容赦なくそんな単語を目にしなければならない。
私は悠仁から少し離れた所で、家に連絡を入れている。電話口のお婆ちゃんは何も知らない、いつもの様子で応答し、帰りが遅くなる事を伝えた。 「別に泊りでも良いんだよ」と言う言葉に対し、少しだけつっかえながらも電話を切った。
「虎杖悠仁だな」
(え……?)
低い男の声が耳に入り、悠仁の元に足早に向かう。 受付の前にいる悠仁を、険しい顔つきの男が佇んでいるのを見て、何故か悪寒が背中を走る。
「呪術高専の伏黒だ。 少し話がしたい、今」
名指しされた悠仁は、不思議に思いながらも、とりあえず受付の人に挨拶をし、私は荷物持ちで悠仁から離れずに傍に居る。 男はちらりと私の方に視線を向けたが、すぐに悠仁へと戻した。
「あのぉ、喪中なんスけど」
「悪いが時間がない。 オマエが持っている呪物は、とても危険なものだ。 今すぐ俺に渡せ」
「じゅぶつ……?」
――危ない。 そんな言葉を聞いて、私は冷や汗をかく。 何かが、回っている歯車が加速している音を感じ、鼓動が速くなる。
――危ない。 何が?
男は「これだ」とスマホの画面を突き出す。 画面を見ては、悠仁は軽い口調で返事をし、男が驚いた顔をしたのにも構わず話を進めている。
二人がどんどん話を続けているにも関わらず、私は何とか表情に出ないようにするので精一杯だった。
(“伏黒”……そう、確か、“伏黒”って言ってた)
この人は、危ない人。 そう、危ない人なの。 と、私はくどく頭に言いきかせ、男、――改め伏黒を見つめた。
(そんな証拠、どこにもないのに……)
悠仁がポケットから例の物を彼に渡した。 用も終わりこの場を去ろうと、横にいる私に「んじゃ、いこうぜ」と歩き出した時――
「中身は!?」
伏黒は悠仁の肩を引き、酷く焦った顔で詰め寄った。
「だァから、先輩がもってるっ……て」
「なんだ?」
「そういや、今夜学校でアレのお札剥がすって言ってた」
その言葉を聞いた途端、衝撃的なものでも見たのかという程目を大きく見開き、伏黒は後退りをしている。
「え……、もしかしてヤバイ?」
どうか、……もうその言葉が出てきませんようにと願うが、そんな願いはあっという間に打ち切られた。
「ヤバイなんてもんじゃない。ソイツ、――死ぬぞ」
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時