第5話 始まり 釘崎side ページ38
――花も恥じらう乙女。
それは、彼女の為にある言葉だと思った。
同じ性別の私でも、その佇まいが人を魅了する事は、遠目で見てもハッキリと分かった。
高専の制服が若干不釣り合いな気がして、でも、そのスラっと伸びる足からは、歩けばひらひらと花弁が舞っている幻覚さえ見える。 前線に出るような人ではない、きっと年上の、補佐的な立場なんだわ。 と、想像して。
――「……とても優しい、大事な男の子です」――
(……似てる)
その笑顔が、その優しさが、その心が――
たった少しの会話でも、Aの魅力は言うまでもなかった。
Aが、自分と同じ世界に足を踏み入れている事に違和感を持ちながらも、自己紹介を済ませる。
眼差しの先を捉えたAの視線が、イモ臭い男に向けられた。 フッと自然な笑顔で見つめるAの周りに、花がゆらゆらと散らされている様に見え、思わずたじろいでしまった。
(家族って……血のつながってない家族だったのね)
苗字、言葉使いが違うけれど、服装と、お互いズレている所が、家族と言われれば確かに似ていると、伏黒と意気投合したのがつい何分か前の話――
そして、私の目の前には、五寸釘を打たれガラガラと崩れ落ちていったマネキンだったものが、切石の様に転がっている。 無事に決まったと、うっとりとしていた所、前方から音が聞こえて身構えた。
見れば、怯え、震えている男の子が、体育座りをして固く縮こまっていた。
(子供……遊びで忍び込んで呪いにっ……てところか)
愛用の金槌を、癖で後ろに退いては推測し、怖がらせないようにしゃがんで男の子に声を掛けたけど、体の怯えは止まらずに首を横に振られた。
(えー……!!)
衝撃の雷が走った。 咳払いをして誤魔化し「子供は美人に懐かないってのは、本当みたいね」と、落ち込む気持ちをかき消した。
「A、は私と同じだから……虎杖呼ぶか」
「まって おいていかないで」
声に反応して視線を戻すと、私に助けを求める男の子の手が。 そして、背後には――呪い。
急いで釘を取り出し、金槌を構える。 呪いの動きが、直ぐに獲物に食らいつく野性的なモノとは違うことに、体をピタリと止めた。
男の子の首筋に、長い爪を向け、此方をニタニタと気持ち悪い表情を向けてくる視線に、嫌悪感を感じる。
(人質!? ――この呪い、知性がある!!)
額を流れる脂汗が、静かに、首筋まで落ちていったのだった。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね！！ (2021年4月28日 3時) (
レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…！（密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています！） (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです！続きが気になります。応援してます！！ (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年11月19日 21時
