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ふわふわと上空に昇る呪いの残像を見つめ、両手を軽く握った。
はたして伝わっていただろうか? 届いていなかったとしても、それでもよかった。
(ただ、私が――)
「――A!! 怪我は!?」
血相を変えて私に寄り添う悠仁が、心配そうに此方を見つめる。
「悠仁……大丈夫。 起き上がるの、手伝ってもらえる?」
「腰が抜けちゃって」と、困った様に微笑むと、悠仁のハの字の眉が元に戻っては、壊れ物でも扱うかの様に、肌にそっと触れる。
「……怪我無くて、ホント良かった」
「悠仁のおかげでね」
「俺、なんも……」
「……さっきの、悠仁じゃなかったの?」
「いや、……行こうとしたんだけど、急に体が蒸発したみてぇに……とにかく、少し休んどけ」
軽々と私を持ち上げ、抱き抱えられた。 悠仁に凭れ掛かりながら、先に進んでいる間、私は頭を悩ませていた。
(悠仁じゃなかった……じゃあ、誰が?)
疑問と不信感が募る中、悠仁が周囲を見渡しながら、口を開く。
「さっき、何であんなこと言ったんだ?」
「あんなこと?」
「呪霊に」
「それは……聞こえたから」
ピタリと悠仁は足を止め、「聞こえた?」とオウム返しで尋ねてくる。
どうやら、あの声は私にしか聞こえていなかったらしく、二人して何故かと考え込んだが、答えが見つかる余地も無かったので、後回しにして別の話題を振って気を逸らした。
抱えられて丁度見やすかったので、目線を悠仁の顔に向け、まじまじと見つめる。 悠仁が「どした、そんな見て」と聞くものだから「えっと……」と躊躇いがちに切り出した。
「目元の痕、指を食べてできたもの?」
「おー、なんかそんな感じ。 だからAは食べんなよな」
何分か前の出来事を蒸し返すほど、悠仁は私に指を食べてほしくないのだろう。 参ったものだと、あの時の私の考えを撤回せざるを得なかった。
「……痛い?」
「痛かねえけど、たまに宿儺が勝手に出てくるから」
(あ、あの時の……)
私はつい先日の大失態を思い出し、こっそりと恥ずかしい気持ちになる。 その気持ちを隠すかの様に、悠仁に声をかけた。
「悠仁が宿儺って呼んでるの、ちょっと以外」
「え!? なんで!」
「ん〜……なんとなく、かな」
悠仁がむくれた顔をしては、二人してすっかりと気持を落ちつかせ、呪いの探索に集中していた。
「……悠仁」
ぼそりと呟き、悠仁を静かに見つめた。
「ん?」
「帰ったら、――話したいこと、あるの」
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時