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「始めますよ……本当にいいんすね、先輩」
家庭科準備室で、悠仁の声がかかるのを視線の端に捉えながら、私は内心で溜息をついた。
(来るんじゃなかったな……)
二年の先輩二人と視線を合わせ、三人でワクワクしながら、生徒会長の、特に痛くもかゆくもないような弱点を探ろうとしている。 ――こっくりさんで。
私はというと、棚にある資料を静かに漁っては、資料の整理整頓をしている。
(あ、ここ資料が剥がれそう。 ……これと、これも。 これは、図書室に返さなきゃいけない資料ね)
「オカ研ッ!!」
ターンッ! と、ドアが勢い良く開かれたと思ったら、ご本人の登場で少しびっくりした。私は、蚊帳の外扱いには慣れている為、成り行きを眺めることもなく資料に集中する。
悠仁と違って、私は静かに暖かい日常をおくることが好きだ。 オカ研の先輩はいい人で、何も警戒することは無いのに、私に張られたレッテルは、それを許してはくれない。
「ところで、Aさんは、何故ここへ?」
(……いけない、聞いていなかった)
まさか声をかけられるとは思わなかった。 生徒会長と、いつから現れたのか分からない高木先生が、こちらを見ている。
(先生がいるってことは、悠仁関係かな?)
高木先生を見ただけで、何も聞かずに決定するのは良くないかもしれないが、ここに来る理由は悠仁以外ありえないと、確信している。
「資料の整理を。 それに、今日は顧問の先生が出張の為、活動が無いのです。 そうですよね、先生」
高木先生は「そうだな!!」と、何とも耳を痛くするような声量で返事をした。
生徒会長は「流石Aさんだな、うんうん」と、何故か嬉しそうだ。
本当は、資料を整理していたのも、手持ち無沙汰で、文字や本を読むのが好きで、悠仁達の方に絶対に加わりたくなかった等、そのような理由ではない。
高木先生が「虎杖、校庭で待ってるぞ!!」と、顔の周りから"ゴゴゴ・・・"と、漫画に使われそうな表情で部屋から去って行った。
「悠仁」
「お?」
「ここにある物片付けてから行く。 教室にある悠仁の鞄も持ってくるから」
「任せた! 俺はちょっくら勝負してくるぜ」
(……悠仁、顔、かお)
今、勝負の事で頭は埋め尽くされているのだろう。 お爺ちゃんのお見舞いの事を忘れていないか少しだけ不安になったが、それよりも、周りに溶け込んで、時計を見るのを忘れないかが心配だった。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時