第3話 自分のために ページ22
カラスは夜行性だと思われがちだが、その見た目に反し、夜明けと日没に活動する。 いつだったか、お婆ちゃんが教えてくれた『夜中にカラスが鳴くと、地震がくる』という言葉を、カラスの鳴き声と共に、目の前で、悠仁が静かに手を合わせている後ろで思い起こす。
お線香をたき、悠仁の後に続いて合掌をした。
(お爺ちゃん、――約束です)
故人の人に、勝手に約束を取り付けるなんて、ずるいかもしれないと思いながらも、言葉には出さず、立ち上がって悠仁と共に歩き出す。
二人で「行ってきます」と「行ってくるよ」を残して。
＊
「悠仁、ごめんね」
「大丈夫だって。 それより、具合はどうだ？」
「一時間前よりましだよ」
「なら良かった。 気にしなくていーから、そのままおぶられてろ」
今の私は、心底足手まといな人間になり下がっている。 酔うと分かってて、酔い止めをきちんと携帯していたのだが、今日は調子が悪いらしい。 ぐて〜っと悠仁の背中に身を任せている状態だ。
「悠仁がいなかったら、今頃私、道端で雑巾になってたね」
「……俺がいんだから、そんなことにはなんねーよ」
私が道端で文字通り、カラカラの雑巾みたいになっている姿を想像したのだろう。 何とも言えないような顔をした後、少し呆れの混じった声色で呟いていた。
「そうだね。 悠仁が一緒だもんね」
昨日の一件で、しこたま悠仁と言い合いをしていた。 「行くったら行くの！」「ダメだ！ Aはここに居てくれよ」「悠仁の頑固者！」「それはAの方だろ!?」「違う、お爺ちゃんに似てる悠仁がもっと頑固者でしょう!?」と、最後の言葉が大きく刺さったのだろう、それ以上何も言わずに同行している。 ちょっと反省してはいるが、後悔は無い。
そんな私たちの会話を、密かに聞いている五条……いや、今日から先生に当たる男は、ポケットに手を突っ込みながら共に歩いている。
「スゲー山ん中だな。 ここ本当に東京？」
「東京も郊外はこんなもんよ？」
「緑が沢山……酸素が美味しい」
本格的に屍の様だ。 今日だけは、貼られたレッテルが引っぺがされているだろう。
先生が学校の解説を懇切丁寧に説明していると、鳶の心地よい鳴き声が聞こえてきたので、説明よりもそちらに聞き入ってしまう。
「とりあえず、悠仁とAはこれから、学長と面談ね」
「学長……」
(何言われるんだろう……)
「――なんだ、貴様が頭ではないのか」
不意に、異質な声が響いた。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね！！ (2021年4月28日 3時) (
レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…！（密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています！） (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです！続きが気になります。応援してます！！ (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年11月19日 21時
