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玄関前で佇み、家出をした娘のように思いつめた顔をする様は、中々見ものだろう。 ――第三者から見れば。
「親御さんにご挨拶してからじゃないとね!」
両手を叩き、ウキウキワクワクしている五条を横目に見る。 悠仁と明日落ち合う時間をもう一度確認して、勇気をもらった。
「……お茶菓子くらいしか出せませんが」
「いいのいいの。 僕は娘さんを貰い受ける事になるかもしれないから、是非ご挨拶をしようとしているだけで、別に美味しいお菓子が食べられそうだから着いてきたわけじゃ」
「そうですか」
最後まで言わせずに、玄関の戸を開けた。
「ただいま帰りました」
返事は帰ってこない。 これはいつもの事で、耳が遠いお婆ちゃんは、独りでいるときはテレビの音が大きいから、玄関からの声は聞こえないのだ。
私は玄関に五条を残し、リビングで画面を見ながらお茶をすするお婆ちゃんに目を向けた。
「お婆ちゃん、今帰りました」
「ああ、Aちゃんかい、お帰んなさい」
「お婆ちゃん、実はお客様がお見えしているんです。 上がってもらっても構いませんか?」
お婆ちゃんは二つ返事で承諾し、曲がった腰を上げ、服のしわを伸ばして背筋をできるだけ伸ばす。 私は玄関から五条を迎えてリビングに連れて行く。
五条は何を思ったのか、歩きながら「……綺麗な家だね」なんて、羨まし気に独り言を呟いていた。
「申し訳ないですねえ、お出迎え出来なくって」
「いえいえ、お気になさらず」
そんな会話をしながら、お婆ちゃんは冷蔵庫から宅配で届く、数々のお父さんからのお土産を引っ張り出しては五条の目の前に積み上げている。 いつの間にかお皿に乗った私の作った和菓子も添えて。
この状況で、どう話を切り出そうかと躊躇っていると、お婆ちゃんの方から言葉を切り出してきた。
「Aちゃん、荷造りしなきゃいけないんじゃないかい? お客様は私がおもてなしするから、行ってらっしゃいな」
「……え?」
言われた言葉が、どれも先読みされすぎて、身構えていた体が一番びっくりしている。
「お婆ちゃん……どうして?」
「
鼻の奥がツンときた。 心に深い愛情が零れ落ちないように、私は背を向けてリビングを後にする。
(お婆ちゃん、お父さん、お母さん……ありがとう)
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時