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「ウマッ! ウマ!」
我慢できなかったのか、熱々の煮物をさっと口に放り込んで、口の中で熱がっている悠仁。しかし、美味しさの方が勝っているので、満面の笑みだ。
「フッ……じゃあ、お皿盛り付けるから待っててね」
「ウン」と一言言って、一口で平らげた悠仁は、大人しく居間の方へと歩いて行った。
食器棚からお皿を出し、盛り付けし終わった。 木製のお盆に乗せ、座卓の上に並べる。「いただきます」と二人で手を合わせ、箸に手を付けた。
*
他愛のない話をして、こうして流れていく、小さくとも、暖かい日々が好きだ。 そんな幸せを噛みしめていた私に、悠仁は悪戯っ子のような顔で言った。
「そういや、Aさぁ」
「ん?」
「三年の先輩に告白されたん?」
「ごほっ! ごほっ! ……どうして知ってるの!?」
「クラスの女子が見たって。 なんで断ったんだ?」
「……はぁ」と溜息を零し、むせた喉を潤す為にお茶を一飲みした。 告白された時のことを思い出し、躊躇なく言い出す。
「いつもの事だよ。 ……一目惚れなんだって」
「あーそっか、うん、Aはそういうの好きじゃないもんなぁ」
返事はせずに、お茶を飲み干す。 悠仁は、テレビのニュースのチャンネルを変えて、面白い番組が無いか探している。 私もテレビに視線を向けて、今度は躊躇いがちに聞いた。
「悠仁はさ」
「んー?」
「私に彼氏ができたら、嬉しい?」
何故か、心臓がうるさく鳴り響く。 普通の高校生なら、一般的な会話だけれども、私たちにとってはあまり話題に出ない会話だったから。
悠仁は、聞かれたことが、あまり自分たちには縁のない話だったからか、一度頭の中を ? にしていたのであろう。首を傾げて呟いた。
「嬉しいけど?」
「――そうだよね」
*
――眩しい日差しが窓から差し込んできて、瞼を開こうと努力する。
「ねむい……」
昨夜は、悠仁と一緒に課題をやり、遅くまで掛かったせいで、少し眠気が残っている。 帰り道では、悠仁が家まで送ってくれた。
一週間前から、近所までついてくる目線も、昨夜には、同じ時間には現れない事を把握できた。
私にストーカーをしている人がいると、悠仁にはまだ伝えていない。 悠仁のことだ、話を聞いた暁にはストーカーを捕まえてしまうだろう。
(でも、今回のストーカーは、嫌な感じがするんだよね……)
「何とかしなきゃな……」
ぽつりと、私は言葉を溢した。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時