悠仁ノ幼馴染【呪術廻戦】

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胸元を抑え込む悠仁を見て、思わず名前を呼んで、駆け寄りたくなる。 それを阻止する為に、五条の後ろにいるのも分かっているし、自分自身も危ないと自覚している。 握る拳が、痛いほど固くなる。

　悠仁は、千鳥足になり、壁に頭を向けて、笑い声を漏らすと――

「おえっ、まっず！ 笑えてくるわ」

(よ、……よかったあ)

　一気に力が抜け、思わず吐息が漏れた。 まだ「おえ〜」と喉を抑え咳込んでいる悠仁の背中に、手をかけて摩ってあげる。

「どったの？」
「いや、なんでもない。 『覚悟はできた』ってことで、いいのかな？」

(……後でそれとなく聞こう)

　返答を静かに見守る中、悠仁は頭の後ろに手を回し、お爺ちゃんの遺影に視線を向けていた。

「本当、面倒くせえ遺言だよ」

　私も、笑っているお爺ちゃんの顔を、穏やかに見つめた。

「テメエの死に様は、もう決まってんだわ」

――『オマエは大勢に囲まれて死ね』――

　お爺ちゃんの最後に残した言葉が、頭の中で木霊する。 きっと悠仁は、その言葉を胸に秘めながらそう言ったに違いない。 人の覚悟程、固く頑丈な物はないと思うから。

「いいね、君みたいのは嫌いじゃない。 楽しい地獄になりそうだ」

　五条は"地獄"という言葉が余程好きなのだろうと、勝手に解釈する。 仕方ない、彼の口から何度も出てくるものだからと、ちょっとだけ言い訳をして。

　五条は「今日中に荷物まとめておいで」と言いながら部屋の扉を開けると、そこには、頭に包帯を巻いている伏黒が佇んでいた。

「東京」
「伏黒!! 元気そうじゃん！」
「コレ見てそう思うか？」
「よかった。 元気そう」

　私の本音も、何故か悠仁と共に冷ややかな目で見つめられた。

「オマエはこれから、俺と同じ呪術師の学校に転入するんだ」

　悠仁が拍子抜けた声を上げては、五条が学校名を紹介する。

「ちなみに、一年生は君らで四人目」
「少なっ!! ってえ、ら？」
「私も一緒だよ」
「んなっ！ 聞いてねーぞ！ なん」

　"で"と、悠仁が言い切る前に、五条が口を開いた。

「君について行かないと、僕とAの禁断の恋が始まっちゃうからね、それは流石に背徳感がありすぎてこっちを選んだってわけ！」
「キンダン!?」
「……五条さん、語弊があるのと、少し口を慎んだ方がいいです。 ……伏黒さんが今にも殴りかかりそうですよ」

　悠仁と五条が、揃って黒いオーラを纏った伏黒の、鋭すぎる眼光を見つめ、身震いしていた。

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