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目覚めたのは、それからしばらく経ってからだった。 どうやら相当疲れていたらしく、私は悠仁の背中でスヤスヤと寝続けたらしい。
病院に着いても、先輩達に会っても、全く起きずに危うく火葬を始めるところだった。
お爺ちゃんは白くほねぼねしい手を、瞳を、固く閉じていた。 「お爺ちゃん、行ってらっしゃい」とぽつりと呟き、悠仁と外へ出る。
「ごめんね悠仁。 ずっと眠っちゃってたね」
「いや……俺の方こそ」
なにか謝る様なことをしたのだろうか? どうしてそんなに辛そうな顔をするの、と問い詰めたくて、悠仁の顔を覗き見る。
「悠仁?」
「俺のせいだ。 ごめんな」
その『ごめんな』の一言に、何が詰め込まれているのだろう。 きっと色々と考えて、アレもこれも詰め込んでしまったんだ。
「悠仁」
座っている膝の上に置かれていた手を取って、上から軽く握る。
「背負ってくれて、ありがとう。 お陰でぐっすり眠って元気100倍、アンペンマン!」
お馴染みの声にできるだけ寄せて、片手で拳を握りながら言うと、悠仁は鳩が豆鉄砲を食ったように目を見開く。
「……アンペンマンそっくりすぎ!」
(悠仁は、笑ってる顔が一番素敵だよ)
(悲しい顔も、時にはしちゃうかもしれないけど)
(私のことで、悲しい顔をして欲しくないから)
*
「亡くなったのは?」
「爺ちゃん。 でも親みたいなもんかな」
「そっか、すまないねそんな時に。 ……で、どうするかは決まった?」
二人の会話を、私はじっとりと耳にしながら悠仁の右隣に腰を掛けている。
呪いというものが、どれだけ恐ろしいものか、その先の真実を、五条は嘘偽りなく悠仁と私に告げる。
火葬を終え、骨だけになったお爺ちゃんの遺骨を、丁寧に二人で骨壺へ運んでいく。
悠仁は「宿儺が全部消えれば、呪いに殺される人も、少しは減るかな」と五条に質問をしていた。
五条は間を空けて「勿論」と答えると、悠仁は箸をコトリと起き、骨壺に蓋をして「あの指、まだある?」と五条の方へ向き直って言った。
「Aは僕の後ろに」
五条の近くに寄り、三歩後ろの方で固唾を飲んで待機する。 悠仁に指を渡して、五条は後ろへ下がりながら、私の前へ腕を出す。 悠仁は禍々しい指を、意を決して一飲みした。
(丸のみ……齧ったりはできないのね)
冷静に観察をして、心を落ち着かせていた。 段々と悠仁に、黒い靄と顔模様が体を纏っていく姿を、右目だけがハッキリと映していた。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時