第1話 両面宿儺 ページ2
夕焼けが沈む橙色の空の下。
【虎杖】と書かれた、赤い郵便受けの家。
グツグツと煮物に火を通す、カチャカチャと食器音等が響く台所で、私は淡々と調理をする。
悠仁は今頃、病院に入院中のお爺ちゃんへ連絡しているだろう。
お爺ちゃんが入院している事以外は、日常化している景色だ。
お爺ちゃんが居た頃は、家で作ったおかずをお裾分けしに行ったり、悠仁と一緒に調理しては、お爺ちゃんに真面目な顔で｢Aちゃんは悠仁と付き合うのか？｣と聞かれて、慌てて顔を振って否定していた。
そんな懐かしい様な、少し前までの出来事だったのに、いつの間にか随分前の事だった感じがして、少し寂しさを覚えているところ――
｢Aー｣
｢ん？ どうだった？｣
電話を終え、居間の方へ足を進めた悠仁は、台所に居る私にまで聞こえる声を上げた。
私は、作業が一段落しないままで、生返事をして、手は休めずに聞き耳を立てる。
｢爺ちゃん、相変わらずだった。 明日部活終わったら行くか？｣
部活とは、悠仁が所属しているオカ研の事だろう。 私は「ん〜……」と考えを巡らせて、答えを先延ばしにする。
(明日、六限が終わったらオカ研に行こう)
｢行く。 お婆ちゃんがフルーツゼリー渡して欲しいって言ってたから｣
｢オッケー｣
お婆ちゃんは、前まで別々の家で暮らしていたけれど、長年住んでいた家を売って、今は同じ家に暮らしている。 姉が家を出てから、広すぎる家に、独りは静かすぎて嫌だと思っていた。だから、私にとっては嬉しい事だった。
｢もう少しで出来上がるよ｣
エプロンに手を伸ばし、手に付いた水分を拭い取ると、ふいに背後から落ちる影に目を向けた。
「ん〜！ 美味そう！」
悠仁が、周りに花を咲かせている様な顔で、煮えて水分が無くなってきているおかずを見ている。
(これは、味見したいって顔だね)
「悠仁君、悠仁君、今なら味見役を募集中でございますよ」
「はいはい！ 俺、立候補します！」
元気よく腕を上げながら、悠仁が答えた。
「じゃあ、立候補者の悠仁君には、こちらを味見してもらいましょう」
小皿に少量のおかずを乗せ、悠仁に渡す。 悠仁は、待ってました！ と言わんばかりに、口から涎を垂らして待つ犬のように、小皿を受け取った。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね！！ (2021年4月28日 3時) (
レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…！（密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています！） (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです！続きが気になります。応援してます！！ (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年11月19日 21時
