悠仁ノ幼馴染【呪術廻戦】

Prologue ページ1

　母は、私が物心つく前から、既にこの世には居なかった。 写真で見た母は、花鳥風月を背景に、優しく微笑む、笑顔の素敵な人だった。

　父は、仕事人間で、他県に単身赴任をしている。 家に帰ってくるのは二,三ヵ月に一度。 忙しくなれば半年に一度程度で、帰ってきても、口数の少ない人だから、会話はあまり続かない。
　
　お婆ちゃんは、母を「佳人薄命な子だった」と口にしていた。 四歳離れた姉と、私を産んで、すぐに息を引き取ったことからも、その言葉が合う人なんだ、と悟った。


　姉の稲海(いなみ)は、「姉妹なのに似ていない」と、周りから散々言われ続けたことで、私を好いてはいなかった。
　高校卒業後直ぐ、私の顔すら見ずに、化粧道具ばかりが詰まった鞄をしょい込み、連絡先を変え、家を飛び出して行った。

　小さい頃から、そんな環境にいたので、私は独りでいることが多かった。 周りの子達と馴染めない私に、お婆ちゃんが、ご近所さんの知り合いで男の子を紹介してくれた。

　忘れもしない
　忘れられない記憶。

　男の子の名前は、虎杖悠仁。
　薄茶色の短髪頭で、刈り上げられた髪は黒い。
　茶色い瞳は、素直な彼にぴったりで、初対面の時も、私に何の躊躇いもなく接してきた。

　半透明だった世界に居た私が、彼の手を握り返すと、途端に景色が変わっていった。 当たり前のように傍に居てくれ、独りの時間を忘れさせられる人になった時には、


　私は……貴方の事を――

第1話　両面宿儺→

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