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「おぉ」
悠仁が手にしているのは、全体三十センチ程のうなぎ包丁だ。 あごの部分に布が巻かれ、マチの部分には黒い動物の毛皮が誂えてある。
私が手にしているのは、二十一センチの家庭でもよく使われる牛刀だ。 刀身が黒く、柄尻には縄で結ばれた輪っかがある。
「呪具、『
途端、包丁を持つ手が震えた。 自分が今、何を持っていて、何のために利用するか、頭で理解してしまったからだ。
「せ、んせい……」
「それが無きゃ、呪いは殺せないよ」
ガンガンと頭に響く言葉を、無理やり除外したくて、悠仁に憂慮に耐えない視線を向けたが、背を向けていたので好都合だと、自分に言いきかせた。
(……怖い)
「あーそれから、宿儺は出しちゃダメだよ」
悠仁が先生の忠告に此方を振り返る。
「アレを使えばその辺の呪いなんて瞬殺だけど、近くの人間も巻き込まれる」
(……怖い)
「分かった、宿儺は出さない」
悠仁は親指を立て承諾すると、つま先を此方に向けて、包丁を持っている私の両手の上に、手のひらを乗せてきた。
「A、行こうぜ」
「あ……」
「――守る為に、持ってればいいんじゃねぇの」
「……うん」
冷えていた心も、指先も、悠仁と繋いだ手は――温かかった。
*
落書きだらけのシャッターを上げた先は、埃と鉄臭さが鼻をかすめる。
悠仁が周囲を警戒し、機敏な動きを見せるが、釘崎は先へ先へとスタスタ足を進めている。
階段に足を進めていた時、煩わさしそうに釘崎が口を開いた。
「あ゛〜ダルっ。 なんで東京来てまで呪いの相手なんか……」
悠仁は、意味が理解できなさそうに釘崎を見つめ、言葉をかけたが、釘崎は別のことに頭を回していた様で、振り返り言った。
「時短時短、二手に別れましょ。 私は上から1Fずつ調べるから、アンタらは下から」
一人を選択した釘崎に、思わず声をかける。
「釘崎さん、私も上に行きます」
「平気平気、そっちは頼むわ。 さっさと終わらせてザギンでシースーよ」
「ちょっと待てよ、もうちょい真面目にいこーぜ。 呪いって危ねーんだよ」
力の入った靴音を立てながら、勢いよく悠仁にひと蹴りした釘崎からは、憤懣な空気が駄々洩れで、私は蹴とばされた悠仁を心配しつつも釘崎に目を合わせられずにいる。
(す、すごい力……)
声を荒げ、悠仁を一喝した釘崎に内心驚嘆していた
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時