礼節2 ページ40
現れた呪霊は、新田とAの周辺をかぎ回っている。
覆われた体の上に、ぼたぼたと粘液性の液体が降りかかる。
新田はまだ起きない。Aは不快感を堪えながら意識のないフリを保っていた。
きっと真正面から向かっても勝てない。
隙を…。
呪霊が離れた気配を察知して再び目を開ける。
すると、呪霊は新田の頬に舌のような触手を撫でつけていた。そして大きな口を開いて…
ドカッ
Aは新田を口に含もうとしてた呪霊の足元を蹴飛ばした。蹴られた体の一部がぼろぼろとAの体の上に落ちていく。
Aは真希達との訓練の中、自身の呪力を身に纏い攻撃することで、触れた場所の呪力を消滅させることができるようになっていた。
足元が崩れバランスを悪くした呪霊がその場に倒れ込む。
もう一度よく狙い、呪霊の頭部に足を振り下ろしたとき
ばきっ
力強く大きな触手がAの足の上へ振りかざされた。手のように見えるその触手はメキメキと音を立ててAの細い足を恐ろしい力で押しつぶす。あまりの激痛にAは歯を食いしばった。声が出せない分、Aの中に痛みや熱、苦しみがぐるぐると渦巻き籠っていくような感覚を覚えた。
うううぅぅぅぅぅ〜〜〜…っ、
だめだ!気絶するな。気絶するな!
痛みと恐怖で意識が朦朧とする中、歯を食いしばりAは何度も自分に言い聞かせた。
意識を手放せば、新田も自分も、死ぬと分かっていた。
過去に大きな怪我をしてこなかったAにとって、この痛みは想像以上のものだった。
「いだい、いだい」
呪霊は、Aな足を折った手が、ぼろぼろと崩れていくのを見てよろけた。手と足を失い、呪霊へもダメージは蓄積されている。しかし、手が拘束されている中、折れた足を抱え、あと一本の足のみで戦う勇気と技術はAにはなかった。
新田さん、ごめん…。
目の前で目を閉じ、穏やかに息する新田に申し訳なく思いながら、Aは死を覚悟した。
「いだぁぁぁあい!!」
呪霊は、怒りからかより強力な呪力を放ち、すでにボロボロの身体を震わせた。呪霊の肉塊が横たわる2人を汚す。
もうむり…むりだ…。
憤怒する呪霊を前に、Aはきゅっと目を瞑った。
「やぁ、グッドタイミングかな。」
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ゆうき(プロフ) - 時さん» すごく嬉しいです。ありがとうございます。時さんも更新頑張ってください。いつでもコメント欄いらっしゃってくださいね。 (2021年8月6日 11時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
時(プロフ) - コメント失礼します!最初で一気に惹かれました!続きを楽しみにしています!無理せず更新頑張ってくださいね! (2021年8月6日 11時) (レス) id: 65803b71a1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ラリマさん» コメントありがとうございます。凄く嬉しいです。優しいお言葉感謝します。ラリマさんも体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。作品の方にもお邪魔させていただきます(p_-) (2021年8月6日 0時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
ラリマ(プロフ) - コメント失礼します! 続きがすごく楽しみです!これからも体調に気をつけて更新頑張ってください!!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: 3c461fe813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2021年8月3日 22時