礼節 ページ39
ぴちょん…っ。
ぴちゃ、ぴちゃ。
冷たい。
頬に水滴が触れる感覚、頭が重くぼーっとする。
濡れた服が体に張り付き酷い気分だ。
目を開けるとそこは薄暗い洞窟のような場所。
壁から垂れ下がった肉のように蠢めく紐が長く、そしてAと新田に絡みついていた。手は拘束されて動かない。
呪霊の巣…。
身動きをしようとすると、横たわった体の下でジャラジャラと硬いものが擦れ合う音が辺りに響いた。
隣に新田がAと同様に目を閉じて横たわっている。幸いなことに呼吸はしているようだった。
Aはそのことに安堵しつつも、状況を把握するために覚めきらない目で辺りをよく観察する。
音が響き方から、地下か洞窟かの密閉された空間だろうか。私たちが連れてこられたのは目の前にある水溜りからだろう。底が深くて何も見えない。きっと私の体力じゃ泳ぎきれない。
ざぷ…っ。
水溜りの水面が揺れた。
来る。
Aは持ち上げていた頭を下ろし、うつむき目を閉じた。
水溜りから現れたそれは臭気を放ち、ずるずると体の一部を引きずって陸へと上がった。
光源をもっているのか、辺り一面が明るく照らされる。
Aは、呪霊が目の前に居ないことを感じ、うすく瞼を開いた。
嘘でしょ…。
軽石のように感じていた、A達が横たわるそこには大量の人骨が敷き詰められていた。紛れもない、行方不明者の物だろう。
失敗した。この呪霊の呪いの発現は、あの空き店舗に入った時ではなく、出る時だったのか。
それならば扉を出るときに感じた違和感の正体の説明がつく。Aが扉のズリに足を乗せた瞬間、スイッチは押されていた。
よりによって弱い方を狙うのね。
ここにきてようやくAは恐怖心を抱き始めていた。
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ゆうき(プロフ) - 時さん» すごく嬉しいです。ありがとうございます。時さんも更新頑張ってください。いつでもコメント欄いらっしゃってくださいね。 (2021年8月6日 11時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
時(プロフ) - コメント失礼します!最初で一気に惹かれました!続きを楽しみにしています!無理せず更新頑張ってくださいね! (2021年8月6日 11時) (レス) id: 65803b71a1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ラリマさん» コメントありがとうございます。凄く嬉しいです。優しいお言葉感謝します。ラリマさんも体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。作品の方にもお邪魔させていただきます(p_-) (2021年8月6日 0時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
ラリマ(プロフ) - コメント失礼します! 続きがすごく楽しみです!これからも体調に気をつけて更新頑張ってください!!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: 3c461fe813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2021年8月3日 22時