初仕事5 ページ24
冷静さを失った私に反して、他の3人は臨戦態勢に入っている。
しかし、五条さんの一言で三人はその肩の力を少し緩めた。
「今回見て欲しいのは、Aちゃんの術式なんだ。みんなよく見ていてくれ。」
相変わらず訳のわからないことを言う五条さんを私は思わず睨みつけた。
ザラザラボコボコとした肌が目視できる程に、蛙のような化け物は私の目の前に来ている。
化け物に背中を向けながら、私を抱くようにして包む五条さんの手はどれだけ暴れてもびくともせず、まるで逃げる様子もない。
「どういうつもりですか!!そいつ何も分かってないただの人間じゃないですか!!」
妙な動きをしながら近づいてくる化け物に、伏黒さんが見るに耐えないといった様子で五条さんに向かって叫んだ。
伏黒さんは今にも化け物に飛びかかりそうだ。
「落ち着くんだ、恵。」
「…っ!」
大きく丸いその異形の目が私をじっと捉えている。
化け物の大きな口から吐かれる息は腐卵を彷彿とさせ、私の髪をなびかせる程の距離にある。
私はその恐ろしさに逃げる事も忘れ、五条さんの腕の中でただその身を震わせていた。
3人は何かを待つようにただその身をじっとさせ、全員一部始終を見届けるよう息を潜めた。
化け物はぼろぼろの水かきのついた、ヌルヌルとした手を私に近づけた。
それがもう数センチにも満たない距離に来た時、
ああ、私は殺される。
そうはっきりと心で強く感じ、私は穏やかに目を閉じた。
その時だった。
体が熱を発しているかのように体温がグッと熱くなり鼓動が突然激しく全身を打ち鳴らし始めた。
身体の中で何が起こっているのか、自分の鼓動が鼓膜を通じてけたたましい音を鳴らす。
それに反して、辺りは急に静まり返ったようで、私になんの刺激も与えない。
ただ私の視界に映るのは、肉体がまるでみじん切りされたようにゆっくりとバラバラになる化け物の姿。
小分けにされたその肉の塊はじわじわと空中に馴染んでいくようにまるで溶けるかのように一粒一粒が小さく散っていく。
あ、この感覚…。
時間はわからない。
ただ推測されるこの0.000001秒ほどの瞬間に、
あの時と同じだ。
母が死んだあの日を思い出していた。
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ゆうき(プロフ) - 時さん» すごく嬉しいです。ありがとうございます。時さんも更新頑張ってください。いつでもコメント欄いらっしゃってくださいね。 (2021年8月6日 11時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
時(プロフ) - コメント失礼します!最初で一気に惹かれました!続きを楽しみにしています!無理せず更新頑張ってくださいね! (2021年8月6日 11時) (レス) id: 65803b71a1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ラリマさん» コメントありがとうございます。凄く嬉しいです。優しいお言葉感謝します。ラリマさんも体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。作品の方にもお邪魔させていただきます(p_-) (2021年8月6日 0時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
ラリマ(プロフ) - コメント失礼します! 続きがすごく楽しみです!これからも体調に気をつけて更新頑張ってください!!! (2021年8月6日 0時) (レス) id: 3c461fe813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2021年8月3日 22時