辛酸4 ページ27
『うれしい』
弁当箱を開けると、最近よく見る子供のキャラクターがズタズタの状態で現れた。やぶれた薄焼き卵からはまるで出血でもしているのかと見紛うほど、赤いチキンライスがのぞいている。
「ふはっ、嬉しいね。君はこういうのが好きかい、いつものより。」
夏油はケタケタと笑いながら、足が千切れたタコの形?の赤ウインナーを口に運びながら言った。
『手作り感があって良くないですか。いつものお弁当もすごく美味しいけど、あの2人が気持ちを込めて作ってくれたんだなって、より美味しく感じます。』
2人が言う”いつもの”とは、訓練の朝、用意されている弁当のことだった。中身は毎回違っていて、見た目も端正で、味も美味しく、栄養状態も考えられたような、きっとこの大きな施設の料理人が作ってるのだろうなって思うお弁当。
一口一口を噛み締めるように味わうAを、夏油は見ていた。そして口を開く。
「それなら、これからはこういう手作り感のある、愛らしい弁当にするね。」
『え?』
「ネ。」
『え。』
「いつも休憩中話さない君を、ここまで饒舌にさせたんだ。私も参考にさせていただこう。」
『え、あのお弁当って。』
あの繊細な弁当を、目の前の大きな男が作っていることを知り、Aは思わず身を乗り出した。
「こう見えても器用なんだよ。君が好きなキャラ弁も作れるよ。」
『好きというか…。よく作ってたんですか?』
ただの器用、とは表せないあのいつもの商品のような弁当箱を思い出し、感心するAの箸はとっくに止まっていた。
「奈々子達にごねられてね。作らされていたんだ。」
夏油の言葉に少し口籠もる。
3人は兄弟…?いやでも、奈々子達夏油さんのこと好きだって言ってたよな??
Aが悶々と考え込む様子を見て、夏油は笑った。
「君はなんでも顔に出やすいんだね。」
『えっ、そ、そうですか?』
夏油の言葉に、Aは思わず両手で顔を覆った。いつもニヤニヤ口角を上げている夏油には、全て見透かされているような感じがしていた。
「その性格じゃ、さぞ悟にからかわれたことだろう。」
夏油の口からその名前が出ることを予測していなかったAは言葉に詰まった。そして頭の中で思い返してみるが、からかわれた、という表現にふさわしい記憶はなかった。
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ゆうき(プロフ) - びびでばびでぶー (3月8日 22時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ここまでスクロールしてくれたあなたはこの小説のファンということでよろしいでしょうか (3月7日 21時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - はちゃめちゃにイチャイチャしてるの書きたい、ストーリー展開させていくのきちゅい (3月7日 21時) (レス) @page37 id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメントほちぃ… (3月3日 23時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2023年12月15日 18時