誤審 ページ15
「一体何をしているんだ君たちは。」
「ごめんなさぁい、夏油様ぁ」
仁王立ちで見下げる夏油の視線の先には、涙目をした美々子と奈々子が何度も何度も謝る午前7時。
夜好きな人の話に花を咲かせた女子達はあのままAの布団で眠りについていた。
「客人を静かに休めてあげるようにと言っただろう。」
本当はあまり親しくして情がうつってはいけないからだったが…。
「でもぉ、Aはもう私たちの家族なんでしょ?」
「歳の近い術師と仲良くなれる機会ってそう無いから…。」
「まったく…。」
手遅れか。
この子達も本来は普通の少女達だ。
会わせてしまったのがまずかったな。
『私からもごめんなさい。夏油さん。私もつい話し込んでしまって。』
そう言って襖を遠慮がちに開けてAが申し訳なさそうに目を伏せた。
長いまつ毛が朝日に照らされている。
「いや、構わないんだが……ん?」
Aに目線を落とした夏油は言いかけていたのを辞めた。細く伏せた目をいつもより大きく開き、その目に映るものを問いた。
「君、覚に触れたのかい。」
黒い小さな猿は、Aの華奢な肩にしっかりとしがみついている。
『そうなんです。朝起きたらこの子が私の服の中で眠っていて…。術式が無くなったって訳じゃないんですけど…。』
夏油はAを凝視する。内には並々ならぬ呪力を秘めているが、かつて外側を覆うようにしていた術式は完全に解けていた。
「そのまま術式を操ることはできる?」
『はい…できると思いますけど…。』
Aは術式を見せようとしたのか、肩にいる覚に気をやった。
「いや、今は見せなくていい。」
『は、はい。』
呪霊との信頼関係の構築による術式のコントロールか。
たまたま強力な力を手に入れただけで抑える力もない猿だと思っていたが。
何か強大な力…魅力を感じるな…。
「夏油様ぁ、」
「ああ、もう怒っていないよ。それより用ができた。君たちには留守番を頼むよ。」
美々子と奈々子のこともある。
この純粋さ。術師としての素質。
特級の中でも上々だね。
「A。出かける準備をしておいで。」
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ゆうき(プロフ) - びびでばびでぶー (3月8日 22時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ここまでスクロールしてくれたあなたはこの小説のファンということでよろしいでしょうか (3月7日 21時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - はちゃめちゃにイチャイチャしてるの書きたい、ストーリー展開させていくのきちゅい (3月7日 21時) (レス) @page37 id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメントほちぃ… (3月3日 23時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2023年12月15日 18時