桔梗が沈む ページ39
しかし、アズールにとって契約こそが慈悲。
対価を払えずに契約違反をした彼らに与える慈悲など微塵も持っていないのだ。
｢ジェイド、フロイド。新入りの指導は任せましたよ｣
｢はい｣
｢は〜い｣
リーチ兄弟がイソギンチャク集団を引き摺り、無理矢理立たせて指導を始めたのを確認してからアズールは三人へと近付く。
そして、Aの腕を引いて抱き寄せるとそのままジャック達と距離をとった。
｢あっ、おい！｣
｢サバナクロー寮のジャック・ハウルくんに、オンボロ寮のユウさん……でしたね。君達もどうかお引き取りを。次は是非、お客様として店においで下さい。何時でも歓迎しますよ｣
｢まずはAを返せ！ そしたら俺らは帰る｣
｢あぁ、ご安心を。僕達オクタヴィネル寮が彼女を傷つけることは万に一つもありませんから｣
にっこりと余所行きの笑顔を二人に向けてから、アズールはAを横抱きにして店の奥へと歩いていく。
心配そうな表情を浮かべ、今にもこちらへと駆け寄ってきそうなジャックに戻れと手で示すと、彼は奥歯を噛み締めてユウと共にモストロ・ラウンジから出て行った。
二人が戻って行く背を見ながら、Aはアズールの肩を叩いて下ろすように促したのだが、それは笑顔で却下されてしまう。
そして、彼女が連れて行かれた先はラウンジのとある席であった。
ふわふわのソファに優しく下ろされ、机を挟んだ向こう側にアズールも腰を下ろす。
｢どうぞ｣
｢いらっしゃ〜い。これ、オレらのオススメねぇ｣
給仕の仕事をしているジェイドが、机の上に青色のジュースが入ったカクテルグラスを静かに置いた。
フロイドは勢いよくAの横へ座って長い足を組み、ソファの背凭れに腕を置いて、楽しそうな笑みを浮かべている。
｢Aちゃんがモストロ・ラウンジに来てくれて、オレすっごく嬉しい。ねぇ、ジェイド｣
｢ええ、本当に。まさかAさんがイソギンチャクになってしまったのかと不安に思いましたが、Aさんがそんなことするわけありませんでしたね｣
｢だよねぇ｣
｢そもそも、Aさん相手ならば契約書なしに勉強ぐらい教えて差し上げますよ……因みに今回の順位は？｣
｢一位でした｣
｢おお、それは素晴らしいですね｣
｢さっすがAちゃ〜ん｣
新人教育を早速放棄して、フロイドとジェイドはAに絡み、無償でドリンクを飲ませている。
今回だけは良いだろう、とアズールは見て見ぬふりをして三人の輪の中に混ざりにいった。
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みっきーうっきー - とても、面白い作品ですね。更新停止とかやめてくださいね！応援しているので、頑張って下さい！諦めないで下さい！ \`∀´/ (2020年4月14日 22時) (
レス) id: fbdfd6ec63 (このIDを非表示/違反報告)
＊＊(プロフ) - 本編への組み込み方はもちろんのこと、描写のひとつひとつが美しくて読んでいてとっても楽しいです…！素敵な主人公ちゃんと出会わせてくれてありがとうございます。これからも楽しみにしています！ (2020年4月13日 13時) (レス) id: dd9fb51a76 (このIDを非表示/違反報告)
マツリカ(プロフ) - たまらないほどに読み進めてます！！こういう主人公ちゃん大好きです！！！続きを楽しみに何度も読み返してます。応援してます！頑張ってください！ (2020年4月12日 22時) (レス) id: 88d493ffab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2020年4月12日 18時
