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｢つまり、霊力を持つ者は神と似通った存在になるのかい？｣
｢当たらずとも遠からず、ですねぇ。膨大な霊力を体に溜め込んでいるにも関わらず、発散する方法は持っていない……けれど、霊力は多ければ多い程に他者にバレやすくなるのです｣
｢成程な。駄犬共から縋られ、欲を押し付けられるということか｣
クルーウェルの言う通り、膨大な霊力を持っているだけで発散出来ない人間は、窮地に追い込まれた欲深い人間に縋りつかられてしまう。
その結果、人間の欲という"恐怖"に何時の間にか喰らい尽くされて人格を失うのだ。
Aはその底が見えない程に霊力が多かった。
しかし彼女は戦や密偵、時には外国からの侵入を防ぐ為に日本全体を覆う結界を張っていたので発散は出来ている。
それに、痣丸を顕現させるのに霊力を使用するので使用機会はかなり頻繁にあった。
｢だからこそ、私は自己利益の為に霊力の使用を惜しみませんでしたし、神格化されることもありませんでした｣
｢自己利益、それは意外だね。君ならば、友人や仲間の願いを叶える為に、他者に分け与えていそうなものだが｣
トレインの疑問を、Aは小さく鼻で笑うことによって一蹴する。
｢有り得ませんね｣
人間から酷い扱いを受けたことのあるAにとって、親しくもない他人に利益を与えるだなんて有り得ない。
そんなものの為に時間と労力を割くだけ馬鹿らしいと思っている位には、彼女の心と思考はシビアである。
昔のことを思い出してしまい、Aはつい無意識で右手を強く握り締めた。
腸が煮えくり返るような怒りを一瞬だけとはいえ抱いてしまったことにより、彼女の霊力が一気に膨れ上がって変質を遂げる。
最初に異変に気が付いたのはクルーウェルであった。
｢……冷気、か？｣
そう、部屋が何らかによって冷やされているのである。
トレインもクルーウェルも魔法は使用していない、ということはAが原因としか考えられなかった。
だが見た限り、彼女が霊力や魔力によって何かを発しているようには思えないのだ。
しかし、その理由は次の瞬間に明らかとなった。
｢……っ、これは｣
Aが驚くのも無理はない、何故ならば、クルーウェルの部屋が一瞬で凍りついたからである。
棚やベッド、執務机などは氷で覆われており、更には壁や柱には氷の蔦が巻きついているようだ。
そして、蔦には等間隔を空けて美しく立派な氷の薔薇が咲き誇っている。
彼らの吐き出した吐息が真っ白に染められていた。
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レイ - とても面白くていつも見させて頂いています！更新楽しみにしてるので頑張って下さい！ (2020年4月12日 14時) (
レス) id: 906bb64cc1 (このIDを非表示/違反報告)
MaO(プロフ) - 何度も読み返す程、とても面白いです！いつも素敵な作品をありがとうございます！ (2020年4月10日 12時) (レス) id: 3dee49fcd0 (このIDを非表示/違反報告)
最初は、ぱー(プロフ) - 面白すぎて、イッキに読んでしまった…………。ゆるりさん無理のない程度に更新頑張ってください！ (2020年4月10日 3時) (レス) id: 9e43d059be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2020年4月9日 13時
