9 ページ50
さて、残されたのは相変わらずの笑顔を浮かべているジェイドのみである。
何となく嫌な予感がしていたAは、ベッドの上に飾られていた手触りの良いクッションをぎゅっと抱きしめながら中継を眺めていた。
すると、ジェイドは背中に隠していた綺麗な花束を姫の前に差し出し、貴女の為に採ってきたのだと語り始める。
その一方で、Aはジェイドの持つ花束を視界に捉えた瞬間に深い溜息を吐き出したのだ。
｢ジェイド調子良すぎ。それ、"山で採ってきた猛毒の花"って言ってたヤツじゃん。植えるとこないからって厄介者を押し付けてるだけだろ｣
｢はい。この花は毒性が高く、テラリウムに植えると、他の植物を全て駄目にしてしまうんです。……本来なら、素手で触るだけで手が気触れる筈なんですけどね。ゴーストには効かないようです。勉強になりました｣
｢物騒！！！！｣
｢痛いです！！！｣
そうなるだろうな。
隣の曹沖が大笑いしている声を聞きつつ、Aは額に手を当てて天井を仰いだ。
何奴も此奴もやる気があるのか全く分からないし、何よりフロイドとジェイドは完全に遊びに来ているだろう。
Aの溜息の深さと多さに同情したのか、曹沖が優しい手付きで背中を摩ってくれた。
｢失礼な人ばっかり……貴方達なんて全然王子様じゃないわ！｣
そして、Aと曹沖はイライザに対して途轍もなく嫌悪感を抱き、それを前面に押し出して顔を歪ませたのだった。
正しく"何言ってんだこいつ"、という反応である。
勝手に学校を占拠してイデアを誘拐した挙句、己の理想を押し付けては、当てはまらない相手に平手打ちを食らわすだなんて横暴にも程があるだろう。
更には、己の理想の王子様像から外れた面々を五百年も金縛りに掛けるつもりとは身勝手が過ぎる。
｢これだから傲慢な権力者は心底嫌いなのです。己が望めば全てが手に入ると錯覚し、己以外の全てを自らに尽くす手足だとでも思っているのでしょうか｣
｢何処の世界でも、文化でも変わらないのですね｣
はっきりと言ってしまえば、Aが痣丸を顕現させてゴーストを斬ることが出来たのならば、イライザ達を強制的にあちら側へと送ることが可能だ。
だがしかし、この状況ではナイトレイブンカレッジに戻ること自体が困難であるし、痣丸だけを転送魔法で向こうへ送っても浄化は出来ないのである。
イデアの嘆きを想像して、Aはまたしても溜息を零したのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2094人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
太宰、乱歩などの頭脳派推し - いろんな世界に行ってるみたいなので、其処で知ったボカロなどを歌ってみてほしいです！歌ってみた的な。 (2022年3月14日 3時) (
レス) @page20 id: 6e38a4139d (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 舞夜桜さん» リクエストですね、大丈夫ですよ！ 喜んで承ります〜！ 少しお時間いただきますね。 (2020年7月27日 21時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
舞夜桜 - モブ男が夢主を襲う｢身体中を触ったり、叩いたりする」 それを目撃したキャラが激おこする。 とか書けますでしょうか？ 無理でしたら大丈夫です！ (2020年7月27日 20時) (レス) id: 7970974f99 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - ミミズクさん» ありがとうございます〜！！ 無理してませんよ！ 楽しくやってますから！ これからも頑張りますね！ (2020年7月17日 9時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
ミミズク - いつ見ても最高です！更新無理せず頑張ってください!!! (2020年7月16日 23時) (レス) id: e138928b3a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年7月4日 16時
