忍び寄る影は大胆不敵に ページ5
そして、私が米花町に帰って来たのはあの事件から一週間後。
任務と言っても、新人の臨時講師だった。
で、今日は探偵団の子供たちと久しぶりに会う事になった。
ついでに修理してもらった簪を受け取りに行こうと、皆で阿笠博士の家に向かってる。
『あっちぃ〜…。』
サンサンと照らす太陽を睨み付け、私は襟元を寛げた。
コ「Aさんさぁ、少しは“暑い”以外で喋りなよ。」
『良いんだよ、この国では夏場の会話は全て“暑い”で通用してんだよ。』
哀「そんなわけないでしょ。」
暑さにも負けずに元気にはしゃぐ子供たちを見守り、私とお馴染みの江戸川と哀ちゃんは少し離れた所で駄弁る。
哀ちゃんが不意に意地悪な笑みを浮かべた。
哀「そう言えば、聞いたわよ?Aさん。」
『何をかね?』
哀「貴方、あのポアロの店員さんにキスしたんでしょう?」
『ブハッ!!!』
飲み掛けたスポドリを噴き出し、その場で溺死しかける私。
変な所に引っ掛かるし、もうマジで最悪。
『あ、あああ哀ちゃん!?どうしてソレを!?』
哀「さぁ?何処かの名探偵さんが、報告に来たのかもね。」
それを聞いて私は思いっきり江戸川の両頬をつねる。
『おいコラ自称名探偵さん??何言ってんの?え、バカなの?それとも探偵さんはプライバシーも何のそのなん??バカ???』
大人げないとか最早関係ない!!!!!
ヤンキー座りで詰め寄ると、江戸川の顔が真っ青になっていく。
コ「だ、だって!Aさんが安室さんにキスしたんだよ!?慌てるだろ!?」
『バッ…!!おっきい声で言うと……!!!』
「「「ぇぇえ!!安室さんにキスしたの!?」」」
ほらぁぁぁ!!!
子供ながらの無邪気攻撃がッッッ!!!!!
……そして、キラキラお目目に見つめられて洗いざらい話をしなければならなくなったのは言うまでもない。
ひとまず、コンビニでアイスを食べながら事の経緯を説明した。
……なんでガキ相手に自分の初恋語ってんだろ。
「えっ!?じゃあ、Aお姉さんは初恋もまだだったの!?」
『まぁ、そんなの興味無かったし。』
「素敵ですね!」
『よし、光彦。お前には特別にアイスのお代わり権をやろう。』
「光彦だけズリィ!オレもオレも!!」
『アンタの手には一体何個抱えてんだ!少しは自重しろ!!』
騒がしく何とも平穏な日常風景。
………しかし、そこに忍び寄る影は確かに居た。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2020年7月19日 0時