叱られるほど遠くまで拐って ページ33
チャペル内に一発の銃声が轟き、出豚は天井に吊るされた飾りの下敷きになった。
幸いにして出豚は怪我をしてる様子はない。
私は咄嗟に銃声が聞こえた方角を見つけると、ステンドグラスの向こうからキラリと何かが光ったのを見た。
『……まさか、秀さん?』
疑問文で呟いたけど、それはほぼ確信だった。
だって、私の知る限り絶妙な射撃をする人は秀さんしか居ない。
しかも、数百メートルも遠いこのチャペルの天井を狙い撃ちしたんだ。
『…流石、秀さん。』
見えてるか定かじゃないけど、私はステンドグラスの向こうにむかってグッドサインをした。
そして、不意に降谷さんが離れる。
彼は倒れ伏せた出豚の前に立つと、
降「先ほどから貴方が言っているアンジェリークとは誰ですか?」
と安室さんモードで聞いた。
出豚はキョトンとした後、私を指差す。
デブ男「アンジェリークはあの子だよ!ねぇ、アンジェリークを返してよ!」
降「ーー彼女はそんな名前じゃない。お前が見てるのは似てるだけのキャラクターだろう。」
氷点下のような降谷さんの声に、何故か私が身震いした。
降「ハッキリ言う。容姿でAを計られると不愉快だ。そしてお前のじゃない、僕だけの人だ。」
それだけ言うと降谷さんは微笑んで、私の元に帰って来る。
ブス美「れ、零!ねぇ!そんな男に媚びる尻軽より恋人の私を助けてよ!」
喚き散らしてブス女が降谷さんに叫ぶ。
しかし、降谷さんは無視して私の前に立つと軽々と横抱きにした。
ブス美「ねぇ!無視しないでよ!恋人の私が理不尽な事になってんのよ!?」
降「お前は“俺”の恋人とじゃない、何回言えば理解するんだ。」
面倒くさそうにブス女を睨むと、降谷さんは私を抱いたまま出口に向かう。
『ちょっ、ふる、降谷さんっ??』
降「九重さん、北都さん、すみませんが後の事をお任せしても宜しいですか?」
九「そうじゃな。Aもこんな所にいつまでも居たくないだろう。」
北「安心しなさい、降谷君。決着が着いたら随時報告する。」
ミ「はい。Aさん、ではまた。」
『え?いや、まだ私ドレスなんだけど…。』
しかし、降谷さんは私の訴えを聞かずにそのまま外に出た。
チャペルの外はパトカーやらなんやらで騒然としていた。
そして降谷さんが向かったのは駐車場。
そこには白い車が乱雑に停められていて、彼はいつかのように助手席のドアを開けて私を乗せる。
自身も車に乗ると、車はゆっくりとチャペルを後にした。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2020年7月19日 0時