最愛シンメトリー【U.Hidaka】 (ページ42)

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○○の秋ページ42

「秋と言えば！」
なぁくんの声に、皆が一斉に口を開く。

「読書の秋」
そう言ったのは、那須雄登。
真面目アピールすんな、の目で睨んでいると、
「那須つまんねー。もう一緒にご飯食べに行かないから」
龍我からのキツめの一言。
「え、それ酷くね？」
「食欲の秋だから、いろいろ食べたいなって思ってたんだけど…『読書の秋』だもんねぇ？」
「うそうそ、食欲の秋だね！ご飯奢るよ！」
龍我大好きな雄登にとって、龍我とご飯に行けないのは死活問題だから。

「スポーツの秋。運動したい」
ふふっと笑って言うのは、一世。
最年少の言葉に、お兄ちゃんたちのやる気が入る。
「よし、BTubeの企画にしよう！」
「どこ行きたい？何したい？」
「いつがいいかな…？」
スマホを手に取り、調べだした。

「Aは？」
「んー…芸術の秋かな。絵は描けないけど、見に行きたい」
「美術館デートする？」
後ろからひょっこり現れた飛貴は、ニコニコ笑いながら言う。
「美術館とか博物館は、一人でゆっくり回りたいんで」
「邪魔しないから！お願い!!」
お得意のおねだりポーズに、上目遣い。
誰にでも通用すると思ったら大間違いだから。
「嫌だ」

「行ってあげなよ、無料で行けるんだから」
ね、と飛貴を見る大昇。
飛貴は一瞬考えた後、大きく頷いた。
無料ってそれ、飛貴に払わせるってことでしょ？
「入館料奢ってもらうとか無理だから、一人で行きます」
「お願いします！絶対邪魔しないから!!」
いつもしつこいけど、今日は一段としつこい気がする。

「……秋って、紅葉が綺麗だよね」
ぽつりと零したはずなのに、すかさずそれを拾われる。
「じゃあ、紅葉デートしよ！春はお花見できなかったからさ！」
それならいいでしょ、と言う顔で、私を見つめる。
「いいよ」
鑑賞を邪魔されるくらいなら、一緒に紅葉見に行くくらいしてあげてもいいかなって。

「Aだーいすき!!」
勢いよく飛びついてきた飛貴に、どうすることもできず、
そのまま後ろに倒れた。
「あっ…ごめん」
わかりやすく顔を真っ赤にして、すぐに離れる。
「気をつけてよね」
「はーい」

「綺麗な所、調べておくね」
もう少し先の話なのに、楽しみで仕方ない様子の飛貴。
………まあ、私も密かに楽しみにしているんだけど。
すぐ調子に乗るから、今はまだ言わないでおこうかな。