最愛シンメトリー【U.Hidaka】 (ページ22)

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半引きこもりページ22

「これ、絶対言ってくれないよな」
「これを言わせるのは、かなり難しいと思います」
「そもそも、二人きりで遊びに行ったことすらないんだけど」
「そんなの！……俺だってない」

外でたまたま出会ったさくちゃんと、レッスン室に入ろうとすると、
少し空いたドアから、そんな声が漏れてきた。
本日先に来ていたのは、瑞稀、雄登、優斗くん、飛貴のようだ。

「おはよー」
「あ、A！」
部屋の隅からドアまでの短い距離を、バタバタと走りながら、飛貴が飛びついてきた。
よろけたところをさくちゃんが支えてくれ、なんとか受け止める。
「おはよ！大好き!!」
「はいはい」
とりあえず、中に入れさせてくれ。

そっと飛貴を押し返し、部屋の隅で固まっている男三人のもとへ行く。
「何やってんの？」
「これ」
瑞稀がこちらに向けたスマホの画面には、
Jr.チャンネルの、決め台詞しりとりの動画が流れている。

「難攻不落の美少女に、どうやってこの台詞を言わせようか考えてた」
雄登の言葉に、瑞稀が動画をあるところまでスキップする。
『"ま"
ま、ま……"まだ、帰りたくないな…"
"な"』
「やめなさい！」
私じゃないか！改めて見ると恥ずかしい…。

優斗くんが、私をじっと見て言う。
「Aって、帰りたくないって思う時とかあんの？」
「私をなんだと思ってんのよ」
「半引きこもり」
瑞稀と雄登の声が重なる。
二人からそんな風に思われてたのか…ちょっとショック。
確かに、インドアではあるけど。引きこもりではないからね!?

「じゃあ、浮所とデートって言われたら、行く？」
「那須！答えによってはかなり傷つく質問しないで!!」
「デートは行かない」
騒ぐ飛貴を無視して言うと、あからさまに傷ついた顔をする飛貴。
だってデートって、付き合ってるカップルがするものじゃないの？
「デートはしないけど、ただ遊びに行くならいいよ」
「え…!?」
明るくなった飛貴の顔に、苦笑する。
表情変わりすぎだから。

「じゃあ、じゃあ！一緒に水族館行こ!!」
手をぎゅっと握って、期待に満ちた目で私を見つめる。
「いいよ」
やった！とガッツポーズをして、スケジュールを確認しだした。
……きっと、私が日焼けするのが嫌だってわかってるから、屋内にしてくれたんだろうな。
胸がきゅっと掴まれる感覚。

優斗くんが何か言いたげに私を見ていたけど、聞くことはしなかった。