最愛シンメトリー【U.Hidaka】 (ページ44)

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応援したくて！ページ44

「なんでいるの…」
目の前には、
ニコニコ笑っている飛貴と、近寄るなオーラを放つ瑞稀。

今日は、私が通っている女子校の体育祭。
ここ数日、練習での筋肉痛を訴えてはいたけど。
普通、来るとか思わないじゃん？

「Aの人生最後の体育祭、応援したくて！」
えへへ、と笑うと腕を広げる飛貴。
慌ててその手を払う。

一応帽子で顔を隠しているとはいえ、
私が男と親しげに話しているとなれば、皆見るわけで。
ああ、ほら。近くにいた一年生がこそこそ話してるよ。
二年生も、スマホ構えちゃってるし。

「騒ぎになるかもしれないんだからさ…」
「……怒ってる？」
垂れ下がった耳と尻尾が見えた。
「怒ってはないけど…困ってる」
「ごめん」
間に入ってきたのは、瑞稀だった。
「俺が誘ったの」
だよな、と飛貴に言う。
一瞬戸惑った後、小さく頷いた。
…瑞稀の威圧に負けて。

応援したい、と言う飛貴もだけど、
飛貴を庇う瑞稀もよくわからない。

「……遭遇情報とか盗撮とか出ても、知らないよ」
「ありがとう!!」
ぱぁっと表情を変えた飛貴は、
抱きつこうとした手で、私の頭を撫でた。
「まあ、なんとかするよ」
よかったな、と飛貴を見る瑞稀の目は、兄のよう。
どんだけ可愛がってんの。

「浮所がお弁当作って来てくれたから、食べよ」
私の大好きなものがたくさん入ったお弁当。
こんなに豪華なのは、中学生以来。

「Aの大好きなサンドイッチでしょ、唐揚げでしょ…玉子焼きは甘いのにしたよ！」
はい、と盛り付けられたお皿を受け取り、
玉子焼きを一口。
「美味しい…」
「よかった」
久しぶりに、誰かが作ったご飯を食べたけど。
やっぱり、いいな……。

「午後も頑張ってね！」
「ありがとう」
あんなこと言っちゃったけど、やっぱり応援してもらえるって嬉しいね。
午後は見せ場の団対抗リレーがあるから、頑張らなきゃ。