最愛シンメトリー【U.Hidaka】 (ページ24)

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水族館……デート？ページ24

今日も、待ち合わせの5分前に着くと、
やっぱり飛貴がそこにいて。
デートでは、憧れのシチュエーション。しかし、これはデートじゃない。

「おはよ」
「あ、おはよう」
柔らかく微笑む飛貴。

前々から思ってたけど、
飛貴って、皆がいる時といない時の差が激しいよね。
この前のお出かけの時も、ご飯食べに行った時も、
普段の騒がしさが嘘のように、大人しい。
……調子、狂うじゃん。
そりゃあ、外でいつものように迫られても困るけど。

「Aはイルカが好きだったよね？
イルカショー見よ！」
「飛貴は？見たいのないの？」
水族館って言ったのは飛貴だから、見たいのがあるんだと思ってたのに。
「俺はないよ。Aが見たいの見よう」
そんな言葉が返ってきて、口を閉じる。
私のために、水族館に行ってくれるってこと…？
なんか、心臓に悪いと言うか…。

あたりまえのようにチケットを二枚買った飛貴は、
お金を出させないように、私の手を握った。
そういうのやめてよ。私が気にするの、知ってるでしょ。
私の思いを知らない飛貴は、
「イワシ綺麗だね」
群れを作って泳ぐイワシを見ながら、そう言った。

その後も、クラゲやらオオサンショウウオやら、
写真を撮りながら、館内を回る。
はしゃぐ様子はまるで小学生。
…可愛いからいっか。

「お腹空いたから、ご飯食べよ！」
二人分のハンバーガーを頼み、飛貴より先にお金を出した。

「A、はい」
「絶対受け取らないから」
なんで!!と怒ったように言う飛貴を無視し、ハンバーガーを頬張る。
どうしても、私に払わせたくないらしい。
「逆に、なんで払わせたくないの？」
「それは、その…」
「何？」
口ごもる飛貴にイライラすると、
「俺から誘ったし、それに…
好きな子に、そういうの気にしてもらいたくないから」
俯きながら言った。

「好き」なんて、毎日聞いてるのに…。
いつもと違う場所で、いつもと違う雰囲気を纏う飛貴だからなのか、
鼓動が速くなる。

慣れない甘い空気に、居心地が悪く感じて。
「……イルカショー、始まっちゃうから」
聞こえなかったことにした。