最愛シンメトリーII【U.Hidaka】 (ページ10)

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甘い恋愛ものの映画を観る。
デートの王道、テンプレート。
…でもまあ、私が観たいって言ってたやつだし。
飛貴のリサーチ能力はすごいと思うよ。

肘掛に置いた手の上に、温もりを感じる。
隣の飛貴は、素知らぬ顔でスクリーンを見つめている。
相変わらず、美しい横顔だ。

いつもなら気にならないはずなのに、何故か今日は気になって、全然映画に集中できなかった。

・

「美味しいね」
とコーヒーを啜る飛貴は、少しだけ大人。
私は飲めないから。
苦いもん。紅茶のほうが好き。

飛貴が見つけたこのカフェは、オムライスが美味しいとのこと。
オムライス、大好きなの。

「……見ないで」
「えぇ…」
そんな声出されても…。

愛おしいものを見る目、なんて言うとまた『自惚れ』とか言われそうだけど。
そんな目で見られると、反応に困る。
幸せそうだったのかな、私。

・

私が好きそうだったから
と、カフェの近くの雑貨屋さんに立ち寄る。

目に止まったのは、柴犬のパスケース。
飛貴みたい…
なんて思ってしまった。
プレゼント用にラッピングしてもらう。
男の子へのプレゼントなんて、全くわからないし。
使えればいいかな。
飛貴は優しいし、きっと使ってくれるはず。

バッグに入れて、飛貴と店を後にした。

・

辺りは真っ暗で、空には星が浮かんでいる。
駅前の大きなツリーは、眩しいほどに輝いていた。

「これ…よかったら、受け取って」
先程の雑貨屋さんで買ったのだろう。
丁寧にラッピングされたものを受け取る。
「私も、よかったら…」
袋を抱いた飛貴は、頬をピンクに染めて、微笑んだ。

胸が締めつけられる。
ああ、もう！
全部全部、クリスマスのせいだ。
どこに行っても甘い雰囲気だから。

いつものように、可愛くない考え。
今日くらいは素直になるって、決めたのに。

「今日はありがとう。その………楽しかったよ」
「よかった…。こちらこそ、付き合ってくれてありがとう」
あのさ、と続ける飛貴には悪いけど、耐えられないんだもん。
「もうすぐ電車来るから帰る！じゃあね！」
引き止める飛貴の声を無視し、走っていく。

結局、素直にはなれなかったけど……あれでも、いつもよりは頑張った。
伝わってるといいな。

＊実際のスケジュールと異なっているのは重々承知ですが、あくまで二次創作なので。苦手な方は読まないことをオススメします。