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「……誰、あなた。ここはどこなの」
震える声を抑えながら言えたのはそんな言葉。
いつもの声の何倍も小さくなってしまったが、うらたの耳にはしっかりと入ったようだ。
小柄な体に不釣り合いな大きなマントのようなものが、床を大きく覆う。
「うらた。さっき自分でも言ってたじゃん」
あれは私が言ったわけではなく、勝手に口が動いただけなのに。
そんな言葉を言えるほど私の心は強くない。
「ここ……ね、」
うらたは辺りを見回して、うんうん と頷く。
「俺の書斎。俺が今まで集めた魔法について記された書物を保管してる場所」
“魔法”
現実離れした言葉に、思わず彼を見た。
エメラルドのように綺麗な瞳。けれど、そこには光が宿っていない。
そしてさっきの自分の意志と関係なく動いた、まるで操られたかのような身体。
まさか、という疑念が頭を侵略する。
「魔法、使い……」
うらたはクスリと控えめに笑った。
「せーかい」
その言葉を聞いた瞬間に突然脳内に何かが襲ってきた。
他の誰かに頭をかき回されているような感覚に呻き声が漏れる。
「いやっ、なに、こわい!」
嫌だ嫌だと泣き喚く私の視界に映ったうらたの顔は、楽しそうに笑っていて。
その様子に更に増す恐怖。
ぐちゃぐちゃと頭がかき混ぜられて、思考回路まで全て乗っ取られてしまいそう。
これも、彼の魔法、なんだろうか。
ふと気を緩めたら、意識が飛んで行ってしまいそうな、そんな感覚。
ふわふわと微睡の中におちていくような気がする。
「………お前の全ては、俺のものだ」
***
( 帰りたい )
どこに?どこにかえる?家?
わたしのいえって?
( こわい )
なにがこわい?だれが?
この男が?うらた?
うらた、うらた、うらたさん、うらたさま、うらたさま、
めのまえに見える、みどりの宝石がこぼれてしまいそうで、おもわず手をのばす。
みどりが、いとおしい。
ああ、うらたさま。うらた様、わたしの、うらた様。
「……うらたさま、うらた様、」
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