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「へぇ、そういう事が……」
店内でガヤガヤと賑わう声。それに反してどんより気分の私。「会社ではあんなにマジメなセンパイがこんなに惚気けてるとは知りませんでした」と少し失礼な後輩。
このコは会社の後輩の相馬くん。まふくんには今朝LINEで女のコと飲んでくると言ったが実は相馬くんというれっきとした男と飲んでいるのである。
相馬くんは男だし男心も分かってるだろうと思い相談として飲みに誘ったのだ(まふくんにバレたらとんでもない目に遭いそうだが)。
「──でも俺、カレシさんの気持ちめっちゃ分かります」
「…へ、」
今なんて言ったこいつ。気持ちめっちゃ分かります?相馬くんもあのかまってちゃんと同じ人種なの?
「俺も結構、カレシさんと同じタイプなんすよ」
「……え、マジ?」
「まじです。大まじです」
グイッとジョッキに入った生ビールを飲み干すと話を続けた。
「…明日、海外で仕事してたカノジョが日本に帰ってくるんすよ。だからもう嬉しくって嬉しくて……」
どうやら彼にもカノジョさんがいるらしい。カノジョの話をし始めた途端、急に頬が緩んできた。
「だから帰ってきたらいっぱい匂いつけるつもりなんです」
「……ニオイ?」
私は意味が分からなかった。匂いをつける、とはどういう事なのだろうか。
「それって…」
「あぁ、要するにずーっと抱きついてるってコトっすよ」
「それが匂いをつける行為同然なの?」
「はい」
抱きついてるイコール、匂いをつけてるって事?、と尋ねると相馬くんは「そうっすよ」と返してきた。
「分かりやすく言えばマーキングと同じなんです。俺のだって他の奴に取られないようにするんすよ」
(じゃあまふくんがいつもくつろいでると抱きついてくるのって…)
まふくんが鬱陶しい程抱きついてくるのが理解できた。だからあんなに力強く抱きしめてくるのか。
「そ、そうなんだ……」
「そうっすよ。カノジョ、明日帰ってくるんすけどほんっっとに、楽しみなんです」
彼の横顔な嬉しさを顔全体で表していた。いつもキリッとしている彼がこんなだらしなくデレデレになるとは…。
「センパイもカレシさんの気持ち考えてあげてくださいね」
「えっ?」
「たまにはセンパイから抱きついてみたらどうですか?そしたらカレシさんも超喜ぶと思いますよ」
自分から抱きついてみる、か……
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