聞こえますか、この声が。 (ページ9)

今日:8 hit、昨日:25 hit、合計:137,878 hit

ep.9 ページ9

道枝side

びっくり？

いや、そんな簡単な感情とは違う

目の前に広がる風景は、俺が生きてきて今まで目にした事がない景色やった。

オオサカ国西地区に広がるスラム街。

その、噂くらいはもちろん聞いたことはある。

人身売買、麻薬の密輸、ギャングの抗争。

そんな噂は施設内でも持ちきりで、スラム街出身の奴らはすこぶる喧嘩が強かった。

だけど

自分の目で見て初めて思う

ここだけ、まるで別世界やと。

「俺は、末澤誠也。ようこそ、スラム街へ。」

半ば呆然としてる自分と大橋くんの前に現れた、背の低い人は、人懐こそうな笑顔と明るい金髪。

そして。

「あー、これ。やっぱり気になるよな笑」

「あ、いや、その、ジロジロ見てごめんなさい。」

「いやいや、ええねん、別に。これはさ、俺の弟分が俺のために作ってくれた義足なんよ。イカしてるやろ？」

「なんかそれ、前見た時と変わってへん？」

「あー、大晴な、すごいこだわりようやねん。あと、この松葉杖も、中に色々仕込んであるんよ。」

「えー、すっご。めっちゃ格好いいやん！」

末澤くんの右足は、銀色の義足やった。

右脇に抱えた松葉杖の中には銃が仕込んであんねん。と言いながら笑う末澤くんの明るい笑顔と、大橋くんの笑い声は、この場所にはにつかわなしくないような気がして。

心がギュッとなった。

「なあ、和也。....丈は？」

「一緒に来いって言ったんやけど..。ごめんな。」

「・・・そか。やっぱり嫌われてるんやな...。」

「そんなことない！」

瓦礫で埋め尽くされた道を歩く。

道端には、人相が悪い奴らが歩き回ってたけど、末澤くんの姿を見ると、すぐに物陰に隠れた。

それほど、恐れられてるってことか。

それから、大橋くんと末澤さんの会話。

いや、盗み聞きは趣味とちゃうけど。やっぱり、気になるもんで。

丈くん、なんで来なかったんやろ。

出会って3日しか経ってないけど、いつの間にかこんなに心配してる。

自分には恭平と長尾しかおらんって思ってたけど。

いつの間にか、信頼できる人が増えた。