聞こえますか、この声が。 (ページ49)

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ep.49 ページ49

末澤side

リチャの足を布できつく縛る。

血は、これで止まるはず。

「.....ごめん。」

「暴走するんは、俺の役割やと思ってたんやけどな。」

それを、止めるんがお前の仕事やん。ほんま。

でも、良かった。ギリギリやったけど、リチャも晶哉も守れた。

「お前、ほんまにふざけんなよ。」

「ちょっと小島！今はやめたってや。」

「うっさい大晴。俺は、今怒ってんねん。」

まだ何も口にせずに、はらはらと泣き続ける晶哉の胸ぐらを小島がグイッと掴んでる。

さっきまで安心して涙していた大晴がそれを止めるけど、小島の怒りは収まらんらしい。

まあ、正門がいたら真っ先に止めそうやけど。

俺と、リチャは静観することに決めた。

「何で、相談せんかった？俺ら、そんなに頼りなかったんか？」

「.......迷惑かけたくなかった。」

小さな小さな声で、晶哉が呟いた言葉。

「お前なぁ！ええ加減にせえよ！！！！」

小島が拳を振りかぶる。

ぎゅっと目をつぶった小島より背の高い晶哉と、とっさに間に入ろうとする大晴。

でも、小島が振りかぶった拳は、何にもぶつからず、晶哉の顔をそっと撫でた。

「......ごめんなぁ。俺、リーダーやのに。気づいてやれんくて。ごめん。」

そう言うと、堰が切れたかのように晶哉は声をあげて泣き始めた。

小島と大晴も泣いている。

それを見て、少し微笑んだリチャに、肩を貸してやって一緒に立ち上がる。

「.......良かった。」

「ん？」

「2年前に死ななくて良かったわ。俺、今の仲間も大切やもん。」

紛れもない俺の本心。

俺の言葉に、なぜか表情を少し暗くしたリチャは、何かを振り払うようにゆっくり歩き出した

「なあ、末。俺は、何があっても今の仲間を大切にする。晶哉も含めてな。」

リチャが言っていることの意味がわからない。

「そんなん、俺もやけど？」

「そか....なら良いわ。」

この時はまだわからなかった。

俺が、知らんかったこと。リチャが俺に知らせなかったこと。

そして、俺たちが立ち向かわなければならない敵

そして、自分自身が、時には一番残酷な敵となりうるということを。

第1章～Fin～