聞こえますか、この声が。

ep.20 ページ20

藤原side









夢を見ていた








もうずっと昔の夢









冷たくなって動かないオトンとオカンの前で泣いていた俺を見つけてくれた人





『なあ、お前一人なん？』









まとくんは俺を見つけてくれた。









世界の全部を失った俺に、新しい世界をくれた。









教会には捨てられた子供達がたくさんおった









俺みたいに、流行病で親を失った奴








親を殺された奴







そもそも、親が誰かも知らんやつ








親に捨てられた奴









みんな、みんな傷ついていて、だけどみんな笑ってた








くだらん事で笑ってた









『なあ、丈。この世で一番不公平な事ってなんやと思う？』




『不公平？俺らに親がおらん事？』



『んー、ちょっと違うなぁ。ほんまに不公平な事はな、









この街の全てを知りながら放置してる奴らがおるって事やねん』









仲間となら







こんな、不公平な世界を変えられるって









そう心から信じてた









やのに









『罠や！くそっ！！』









『丈！！！！！！！』









地響きと共に崩れてくる壁









瓦礫に飲み込まれる、そう思った瞬間、押された背中









反対に









瓦礫に飲み込まれて行く末澤の小さな体









必死に腕を伸ばすけど







届かへん









「末澤！！！！！！！！！！」









・





・









・







「いったぁ....」






腹に走る鈍痛が、自分はまだ生きている事を嫌でも思い知らせる。









「ここ、どこ....？」




知らん天井。外が明るいって事は、下水道ではない。









目線を下げると、大橋がスヤスヤと幸せそうに寝ていて。




それに、少しだけ安心した自分がいた。









起こしてやろうかと思って手を伸ばしたけど、大橋の頰に、涙の跡が見えて思いとどまった




やり場の無くなった手はどうしようもなくて、仕方ないから大橋の頭をそっと撫でてやるとムニャムニャと幸せそうな顔で寝てる。









「2年前の自分に見られたら、殺されるわ。」









そう呟いた独り言は、誰にでもなく、自分に言ったはずやったけど









「丈....？」









聞こえてきた懐かしい声に、思わず息が止まった。

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