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「ねえ、こっちにいらっしゃい？こっちに来たら、その抱えているもの全てを正当化出来るのよ」
「正当化なんて望んでいません、みんなの命を抱えて私はこれからも、警備員として、」
「同僚を殺す？」
「違う！」
ああ、そんなに髪の毛を振り乱して否定しなくてもいいのに。そんなに必死だと、逆に胡散臭いわよ。
早く落ちてきて。こっちに落ちてきてくれたら、私が全部受け止めてあげるから。
「こっちで私と一緒に楽しく働きましょう？そうしたら、もう同僚を殺さなくていいのよ」
「……でもそうなったら、今度は私が貴女を殺してしまう、かも」
「私は死なないわ、貴方に殺されるなんてヘマはしない」
持ってた発煙筒を使い彼の視界を奪う、驚いた隙に彼の胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。少々強引に顎を掴んで上を向かせ、喉に噛みつくようにキスをする。
「落ちてきて、ここまで」
「……誰が、落ちるもんか」
「貴方のことを一番理解できる人間は私だって、そのうちわかるわよ」
この煙できっと居場所がバレ、他の警備員が来てしまうだろう。その前に逃げ切らなければ。彼にはみぞおちにキックをお見舞いして、さっさとここから消えよう。
「まて、にげるな、」
「エーミール、またね。今度は迎えに来るわ」
「今度は、Aさん……ゲホッ、貴女を捕まえる」
彼のその情熱的な言葉を聞きながら美術館を後にした。
発煙筒は目くらましには丁度いいけど、やっぱり危ないアイテムね。私が美術館を出てすぐに他の警備員が集まって来ていた、これで彼もすぐに見つかるだろう。
奪ったお宝はどうしよう、質に入れて全部お金にしたら一体どれぐらいになるんだろう。そうしたら新しいバッグを買って、エステに行って、旅行にも行っちゃおうかな。
どれだけお金があっても満たされなかった心は、彼を知って色付いた。彼を知れば知るほどその二面性にときめいてしょうがなかった。会って話して戦って、自分より強いその体も欲しくなった。
次は絶対貴方を盗んでみせるわ、待っててね。
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