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巡った世界の数だけ記憶を持つ私は、それだけの幸せな記憶もあります。苦しく、辛い記憶も。精神を摩耗する事だって少なくはありませんでした。
しかし、それでも失いたくないのは、どんな形であれ貴女を忘れたくなかったのです。例え貴女が最後まで敵対する関係であっても、違う誰かと添い遂げても。抱きしめてあげたくなる程辛そうな顔も春の陽だまりのように笑う顔も忘れたくなかった。失いたくなかった。
何度世界を巡っても、これだけは、貴女への恋心だけは一度だって変わった事はなかった。
私の気持ちが貴女に伝わらなくても、貴女の幸せな顔を見るだけで満足するようになったのはいつからでしょうか。……きっと、いつかの世界で、貴女が白い花びらの舞う中、本当に幸せそうに笑った時ですかね。貴女の笑顔を見る事が出来たらそれでいいと思ったんです。もちろん、私と最後の時まで一緒にいてくれたら嬉しいですが、それはもう強欲なのですかね。
この世界の貴女は、最後は誰の隣で笑うのでしょうか。
最近は私の友人と会う事が多いので、彼なのだろうか。そういえば、彼から近々お前が驚くような事があるぞ、と楽しそうに笑ってましたね。お付き合いの報告とかされるのでしょうか。
出来たら私の誕生日は避けて欲しいですね。やはり好きな女性が違う男性と恋仲になるのは、一人の男として苦しいものがありますので、今後自分の誕生日が来る度に悲しくなってしまいます。
あんなに私の隣じゃなくてもいいと考えて置きながら、結局こう思ってしまう私は独占欲の強い男だったという事なのだろうか。
だからといって、この関係を無闇に壊したくない私は、告白する勇気すらないのですが……。
暗くなる感情を無理やり飲み込むように、残りのコーヒーを飲み干す。
一丁前に独占欲のある私ですが、それでも私の近くでどうか笑っていてください。
この想いだけは許されたいのです。
◇◆◇
後日、貴女が笑顔で私にプレゼントを渡し、同時に告白してくれた事に、恥ずかしくも泣きながら応じるのは、また別の話。
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