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鞄を持つ方の手首をしっかり掴まれてしまい帰れない。
em「帰しませんよ。そんな…そんな悲しい顔をしている貴女をほっとけません！」
あーもううざったい！！
『ほっといて下さいよ！！私にはどうせ才能なんてないんですから！！小説家を目指したって売れないんですよ！教授も本当は私の事を馬鹿にしてるんでしょ！？だったらもう1人にしてください…私に文を書く資格も本を読む資格もないんですから……』
自分でそう言っててあの日の感情が蘇り涙が溢れそうになる。
こんな顔見られたくない…
そう思った時掴まれていた方の腕を引っ張られポスッと抱きしめられた。
コーヒーの匂いと煙草の匂い。
そして、私が好きな本の匂い……
em「何が貴女をそこまで追い詰めたのかは知りません。ですが、本を読むことや文を書くことに資格なんてないんです。貴女のやりたいようにやればいい…満足するまで読んで書いてをすればいい。それに辛い時は思いっきり泣いた方がスッキリしますよ。丁度ここには私しかいませんからね！」
その言葉が、心につっかえていたものを取り除いてしまった。
途端に耐えていたものが一気に溢れ出し小さな子供のように泣き喚く。
泣いてる間教授は優しく子供をあやす様に背中を撫でて、頭を撫でてくれた。
ある程度泣いてスッキリした後事の本末を教授に話した。
すると…
em「子供の夢をそんな簡単に切り捨てるなんてどういうことですか！？どこのどいつや！！説教したる！！」
と自分の事のように怒ってくれた。
それがなんだか嬉しく、面白くって思わずふふっと笑みがこぼれてしまう。
ようやく笑った私にどこか安心したような表情をする教授。
em「兎に角、貴方は自身の夢を諦めてはダメですよ。もし、ダメだった時の事も考えて就職先を見つけるのもありですし、ちゃんと文系の大学に行って改めて文字や言葉と接するのもありです。貴方の進みたい未来に向かいなさい」
コーヒー色の髪が夕日に照らされ輝いている。
あぁ…書かなきゃ。
今のこの状況を文にしたい！
そう思った私は教授にしっかりお礼を伝えて帰宅する。
自宅につき直ぐに机に向かいノートを広げる。
思いつく限りの言葉を…
あの光景を思い出し…
そして、この気持ちも一緒にノートに綴る。
勢い任せで書いたから正直文としてはどうなんだろうという出来だった。
けれど、物凄い満足感だ。
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