エゴ同士の葛藤【バレンタインサバイバル】 ページ19
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私は今、とっても気に食わないことがある。
最近目の敵にしている、されている人物。その存在。
私はただうら若き乙女たちに素敵な愛の日を有意義なものにしてほしいだけ。そのためにチョコレート菓子の作り方やアレンジ方法、アプローチの仕方。私の知りうる最大限の『バレンタイン』というイベントに対するアドバイスを提唱してるだけ。なのに。
あの 永見とかいう風紀委員が とってもしつこい。
「なぜ私に突っかかってくるのでしょうか」
「貴女が女生徒を集めて良からぬことを考えているからですよAさん」
「だから貴方モテないのよ」
「聖なんちゃらという行事を盛り上げるためとは言え、不適切な交友関係を彷彿させることを教示するなど言語道断ですね」
「行動を監視というくだらないことのために、毎回足繁く調理室に出入りする時点でストーカーだと思うのだけれど」
出入り口に佇むミルクティー色と色素の薄い双眸が、チョコレートを溶かしテンパリングをする私を貫いている。左腕に通された『風紀』と大きな刺繍のされた腕章。私の言葉が信じられないのか、訝しげな表情を浮かべているのが気に食わない。
同級生の、永見智司。彼の所属する風紀委員は学校の不備や 、自転車置き場の整備、校門に立ち朝の挨拶運動、制服検査、そして学校行事の管理を生徒会と共に執り行っている。修学旅行など大人の力が必要なところは、もちろん先生の指導の元。
その中でもこの永見智司という男は、とりわけ頭が固いのか、なんなのか。融通というものが全く効かない唐変木。その中でも力を入れているのがこのバレンタインに対するヘイトだろう。
バレンタインの何が嫌なのでしょう。あれほど素敵な恋のイベントはないと思うのだけれど。そりゃあ歴史的観点から言ったらバレンタインってローマ帝国時代の出来事が始まりだし、日本に伝わったのは戦後。しかもキリスト教とは一切関係のないような『好きな男性にチョコレートを贈る』というイベントだ。確かに、これだけだったら私も見向きしないだろう。私がこのバレンタインというイベントを大事にしているところは他にある。
バレンタインデーは、『愛の誓いの日』なのだから。
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