１０話・愚かな行為 ページ10
何も知らないくせに黙って救われろなんて残酷すぎる。
どれだけ私を惨めにすれば気が済むのだろう。
強引で強気で…ほっといてほしいという簡単な願いを受け入れてくれない東方は厄介な存在。
「ねぇ、聞いてるの」
その一声でAは屋上での東方のやり取りの思い返しから目の前の少女に意識が戻った。
「呑気に考え事？随分余裕じゃん。それなら…どんなことされても文句ないよね」
彼女…"あの子"が口角を歪めて笑う。
本来なら授業に参加して黒板を見ているはずだったのに目の前の人物に捕まってしまった。
そんな彼女を見返せば、「見てんじゃねぇーよ」と頭を叩かれる。どうしようもなく、逆らえない。
「あー、じゃああれをやろう」
いいや、逆らってはいけないのだ。そうする権利がない。
されるがまま連れていかれたのはカビ臭い女子トイレ。一つの個室に突っ込まれた途端、便座に顔を突っ込まれて目の前には薄汚れた水。
「拷問ごっこしよーよ」
嫌だと拒絶する前に顔の全てに強烈な異臭と共に汚水が覆い被さった。必死にもがいてあらがっていると途切れ途切れに聞こえる彼女の怒号。
「あんた…わた…の…親…もこうして ！！」
その言葉に思い当たる罪。Aは途端に抵抗する意思を失ってされるがままになる。すると、彼女は怒号から愉しそうな笑い声に早変わりする。
「〜ッ」
屈辱。
その感情を叫び声をあげてぶつけたくなった。だが、それを抑える必要がある。なぜなら、私は彼女に許してもらうためにここにいるのだから。
怒ってはいけない。悲しんではいけない。いくらはらわたが煮え繰り返りそうで辛くて苦しくて受け入れ難い現状だと認識してしまっていても。
だからこそ、余計に目障りなのだ。先ほどから頭の片隅にちらちらと浮かぶ東方という存在が。
何も知らず無条件に手を差し伸べようとするあの存在をこの環境下では欲してしまう自分がいてしまうから。
すると、どうだろう。ここまで一人で耐えてきた積み重ねが、耐えなければという我慢が壊れてしまう。
全てが台無しになる。
「…あー、もう今日はここまでいいや。飽きた」
彼女の気まぐれが救いだと思うが、そんな自分が嫌いだ。罪から逃げようとする意思があると実感するから。
去っていく彼女の背中を見つめたあとAは手首に視線を落とす。逃げる意思があってしまうなら贖罪を自身で行って逃げてはいけないと罰する他ないから…
「やめられないッ…」
自身を傷つける愚かな行為を。
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
