２８話・望まなくても ページ28
貴方を人殺しにしてまで助けられたくないよ。
Aは首を絞める手を必死に引き離そうと東方を縋るように見つめた。
東方がこれから先、どう私の周りにある醜悪を取り除こうとしているか分からない。だけど、それらを排除したところで父がしてきたことやあの子を含める父の被害者たちが報われることはない。
そう、かつてしてきたことや出来事は消えやしない。
だから、根本的な原因の父を消してもまたどこかで憎悪が生まれて沸いて出てくる。そして、血の繋がりのある私に怒りの矛先が向けられる。そう、あの子のように。父に怒りをぶつかる手段がなく、娘である私に目をつけるのだ。たとえ、私自身が関与しないとしても。
どこまでも報われない。
だったらそんな未来は望まない。
だからこそ、贖罪をしたい。死を持って償う。一番手っ取り早くて、恐ろしくて、楽で、最低で、正解だと信じたくて、避けたかった道。
だけど、もう耐えられそうにないから。その願望を叶える覚悟をした。それなのに…
「せんぱい…Aッ…あんたは駄目なんだ。こんなところで死ぬべき人間じゃない」
たった一人の少年がそれを許さない。
「何年、何十年かかるか分からない。ただの学生の俺に出来ることなんてたかが知れてる。だから、将来は警官になってあいつらを消す方法を考える」
計画性もなく、口先だけのようで無謀に聞こえる。だが、東方の目は本気で、彼ならやってのける気迫がある。いや、やってのけるだろう。そういう人物だ。
止めないといけない。
彼は罪の一線を超えてしまう側の人間ではないというのに。全て、全て私のせいで…ッ…
「絶対に叶えてみせる。あんたが起きた時には何の心配もない。その時さ、もう一度俺と知り合ってくれよ。学校生活じゃあ叶わなねぇけど…将来普通の生活で、普通に知り合って…ハハッ…想像するだけで生きるのも悪くねぇって思うだろ？」
彼の目に映る自分は美化されすぎているのだ。
「…なんでだろうな。あんたのことになると必死になっちまう。憎たらしいはずだ。可愛げなんてないくせに。弱っちいくせに。誰よりも…誰よりも優しくて、一人で抱え込んじまって…強がりで放ってなくて…そんなあんたを屋上で見かけた時に目が離せなかった。あぁ…きっとA…あんたは…特別…だ」
うわごとのように吐いている。目の焦点が定まらなくなる。そして、常に輝いていた青い瞳は影を落とした。
「救われてくれ。あんたが望まなくても俺が望むから」
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
