２５話・分かり合えない ページ25
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タンカーに運ばれていくAを見た東方は救急車に同席して病院まで連れ添った。彼女が治療を施された後も側で見守っていた。
固く目を瞑るAが苦しげに汗を流しているのをみて拭いてやろうとするが、手元になく看護師に貰いに行き帰ってきた時にはベッドに彼女の姿が見当たらない。
急いでAがどこに行ったのか知らないかと聞いて回ると階段を上がっていったという。途端に胸騒ぎがして駆け出していた。向かう場所は決まっていて彼女が学校でいつもいた所。
屋上の扉を勢いよく開けた。途端に視界は明るくなって青空が広がっていた。その背景に佇む彼女の姿。
「来ないでほしかった」
こちらに背を向けたまま呟かれた言葉に眉を顰める。ふと彼女の手首を見ると傷が開いて赤い血が滴っていた。
「まだ安静にしとかないといけねぇだろ。先輩」
一歩、ゆっくりと足を進める。こんな時にどんな言葉をかけるのが正解か分かりやしない。ただ、今にも向こうへ落ちそうな彼女を一秒でも早く引っ張りたい思いだけが足を突き動かしていた。
「びっくりしたぜ。血まみれで運ばれる姿を見てよ」
能力で傷を治すことも忘れて救急隊員に詰め寄って「なんとかしろ」と無茶振りをいったことを今になって思い返す。
「その傷は俺が治すから。だからッ…こっちを向いてくれ」
あと数メートルのところで彼女が振り向いた。真っ直ぐにこちらを見つめる瞳には光がなかった。
「…ッ」
もう何を言っても彼女の心には響かないと悟ってしまった。だから、だからこそ…顔を上げて目の前の人物に告げた。
「自分勝手な奴。命を軽々しく扱おうとするあんたが憎たらしい」
目を見開くAに沸々とわき上がる怒りを言葉に乗せてぶつける。
「死を求めた先は残された側の気持ちを踏み躙る罪と悲しみだけだ」
すると、彼女自身も驚きから怒りを込めた瞳でこちらを睨んだ。
「お節介な人。最初から全てが恵まれているあなたが憎たらしい」
不意に手首に視線を落とした彼女は笑みを浮かべる。
「死を求めた先に救いがある、罪を洗い流してくれる…そんな考え方は許せない？」
互いの相違に睨み合う自分たちは分かち合えないのだろう。
「もう楽にさせてよ、私のためを思うなら」
今にも泣き出しそうな彼女に東方は満面の笑みで告げた。
「あんたを死なせる気なんてないっすから、俺」
地面を蹴って勢いよく彼女の元へ駆け出した。重力に従って落ちようとするその手を掴むために。
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
