２４話・否定する ページ24
振り下ろされる刃物を見つめながらAは泣いた。
恐ろしさからではない。目の前のあの子が苦しんでいたのに救われようとしたこと。
自分の愚かさに涙を流した。
当初の気持ちを忘れていた。親の罪は子の罪。どうしようもない父をもってしまった自分。子としてそれを止めれなかった罪。全てを償う覚悟で受け入れていたのに逃げようとした。
「(A)」
名前を呼んで対等に扱ってくれる東方の救いの手をとって幸せになれると期待をして。
ずっと、ずっと苦しい。そうやって泣く彼女以外にも父の被害にあってきた人たちは多くいる。その娘に生まれてきたことの意味を今一度分からされた。
逃げられないのだ。この運命からは。
彼女が刃物を振り下ろして切れた肌から落ちる血。久しく見た赤はやはり…これほどにも美しい。罪人の血を外に流すことで穢れを捨てられているように感じるから。
落ちていく意識の中、あの子の表情が晴れやかになるのを眺めながらAは安堵の笑みを浮かべた。
もう決めたんだ。私はやっぱりこの子のために＿＿＿＿
ピッピッと機械音が遠くで聞こえる。
重い瞼を開けると意識が覚醒し始める。教室の出来事を夢で思い出していたのかと真っ白な天井を見ながらぼんやりと理解した。そして、
死にきれなかった。
この事実に罪の意識が襲いかかった。胸が苦しい、息をするのが辛い、切られた手首が痛む。全ての感覚が生きていることを否定する。
「私は…なんで…」
死にきれなかったの。なんて傲慢な願いだろうか。だが、結局はあの子の手で殺されることを望んでいた。
上半身を起こしてベッドから降りる。手首に繋がる点滴を乱暴に外し、裸足のままAは病室を後にした。ふらりと進む足はゆっくり階段を登っていく。一段、一段と目的の場所へ向かうたびに聞こえてくる声。
「(親の罪はお前の罪でもあるからなぁ！？)」
父の叫びと共に首を締め付けられる感覚。
「(お前のせいで親が死んだんだ！！)」
泣き叫ぶあの子に手首を切りつけられる感覚。
二つの醜悪がAの背中を押してある場所へ向かわせる。階段を上り切った先の扉を開けると、薄暗い建物内から開放的な青空が広がる外へ飛び出した。
胸いっぱい空気を吸って一歩前へ進む。白い柵が立ちはだかるが、足を跨げばすぐにでも柵の外へ…
「(普通の学校生活で…もう一度知り合ってみたい)」
不意に彼の言葉が脳裏を掠めて立ち止まる。その時、屋上の扉が思い切り開く音がした。
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
