１９話・他人のために ページ19
屋上の扉の側でしばしの間、ボーッとAの姿を眺めていた。そんな東方に不意に彼女の視線が景色から彼に移り変わった。
「ついに教室まで乗り込んだわけ？…あと事情も分かったでしょ」
突然話しかけられたことに反応が遅れるが、彼女の"事情"という言葉に頷いた。
「あぁ」
「本当に分かってるの？」
「あんたがいじめられている理由…だろ？だが、本人の口から直接聞いて判断する」
不可解そうに眉を顰めたAに東方は足を彼女の元まで運ぶ。目の前に立ち、見下ろしてこれ以上はぐらかすのは許さないと言った視線を向けた。
その視線にAは一瞬臆したように視線を揺るがせた。そして、恐る恐る口を開いていじめになるまでの経緯に繋がる事情を明らかにした。
大体はいじめの主犯が話していた内容と同じ。だが、A視点で尚且つ彼女の父親が絡んだ事件を事細かく聞いたとのでは捉え方が全く異なった。
何一つ真実を隠さずに話したAは反応を伺うようにこちらを見ている。不安そうではなく、何もかも諦めた顔だった。どうせ厄介ごとに巻き込まれたくないと離れるだろう。そう思っているに違いない。だが…
「やっぱあんた何も悪くないじゃないっすか」
その言葉にAはハッとしたように顔を上げた。
「あんた馬鹿っすよ、ほんと」
自分勝手に生きて欲しい。そう願ってしまう。何度だって。
「もう抵抗でもなんでもしたらいいじゃないっすか」
「ーッそんなの許されない。これが私の罪だから」
「あんた自分にどれだけ罰を与えたら気が済むんすか」
「さぁ」
せめて自分が味方であれば彼女の笑顔を取り戻せる。なんとかなる。そう最初は息巻いてたというのに。やはり、彼女の気持ちは安易と動かない。
それを見透かすように彼女は笑った。
「めんどくさいと思ったでしょ」
「！」
「いいよ、隠さなくても。東方君は私に情があるわけでもなんでもない。ただ自傷を止めたかっただけだもんね」
「…」
そうだ。俺はそのつもりで彼女の側にいた。
「確かに死んだら胸糞悪い。でもごめんね。気にしないでいいよ。私が勝手にやることだから」
だが、今は違う。
本当は誰よりも苦しいというのに優しさから周りを突き放して。そうやって味方が誰もいなくなって一人で抱え込んだ姿。
「ねぇ、東方君。楽になりなよ」
他人のために自分を犠牲にする。そんな態度に俺は…ッ…
「ほっておけねぇーんだよ！！！いい加減に助けを求めろ！！！」
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
