１８話・離せなかった ページ18
「あいつが殺したわけじゃなくてあいつの親が殺したってわけだろ」
「〜ッそうだけどなに！？私の親が殺されたことには変わりない！人殺しの親の血を引いてるあの子だって殺人鬼と変わりないに決まってる！」
「…」
東方はある人物を思い出した。今となっては自分の大切な友人である億泰を。彼の兄はどうしようもない人殺しだった。だが、弟までもがそうとは限らなかった。血筋など関係ない。
だからこそ、東方は納得しなかった。
「それでよってたかっていじめるのか？見てたけどよ、無抵抗なあいつはそんなに害のある人間なのか」
親を殺された。それもクラスメイトの親に。憎しみを抱くのはある意味仕方がない。同情される理由だけのことはある。恨んでしまうのも納得だ。
だが、自分が加害者側になって相手を死に追いやろうとしていることに気づかないのか。自分がされて嫌だったことを繰り返そうとしているのに気付かないのか。手首を切って命を投げ捨てようとしている彼女の姿を見るまで、人殺しの一歩を踏み出そうとしているのが分からないのか。
「あの先輩がどれだけ苦しんでるのか想像して今一度だけでも自分がしていること…見直したほうがいいんじゃないっすか」
「でも！！」
「俺、あんただけの主観でどちらが正しいかなんて決められねぇよ」
東方はそう告げて女から背を向けて教室を後にした。だが、おもむろに歩き出した足はどことなく重い。
難しい問題だ。被害者である主犯の女にはああはいったが、納得していない様子だった。第一、部外者である自分が安易に首を突っ込んで簡単に解決できるものではない。事態の収拾がつかなくなっているほどこじれている。
「クソッ」
東方は髪が乱れることも忘れて掻き上げた。全力でAを援護する意見をはっきりと言えなかったのだ。「いじめをやめろ」という率直な言葉を。
だからこそ、今となって彼女の立場や心情を徐々に把握できていた。彼女は猛烈な罪悪感を背負っている。主犯の女の怒りを、親の罪も全て真っ向から受け止めている。
危ういのだ。
どうせなら、親のしたことなど自分には関係ないと振り切るぐらいの性格だったら…いいや、そしたらこんな事態にはなっていない。
「ほっとけない人っすよ、ほんと」
気づいたら彼女がいるであろう屋上に向かっていた。扉を開けたその先に…いた。
フェンスの向こう側の景色を静かに眺めているそんなAの横顔に東方は目が離せなかった。
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
