１７話・報復 ページ17
＿＿＿＿＿＿
手を差し伸べたところで彼女はその手を取らない。
「(後から後悔するよ、私を助けたことを)」
そこまでして頑なに救いを拒む理由を知りたい。
「(お願いだからやめてッ…これ以上は…)」
いじめという苦しみを自ら受け止めているわけを全て。
首を突っ込んだからには途中で投げ出したりしない。たとえそれが、彼女自身が嫌がることだとしても。
「あんなのみて引き返せるかよ」
東方は今日もAの教室へと足を運んでいた。
そして、扉へと手を掛けて中へと入る。会いにきたのはAであり、いじめが行われる前にいっそ連れ出してやろうと思っていたのだが…
「わぁ！噂の仗助くんじゃん！ほんと近くで見るとかっこいいね」
Aはおらず、目の前にはあの主犯の女がはしゃいでいた。思わず顔が引き攣るが、無視するわけにもいかない。それにAは教室におらず、主犯の女が目の前にいるこの状況はいじめの真相を知るいい機会だ。
東方は曖昧に笑った。すると、何を勘違いしたのか相手は腕を絡ませて上目遣いで覗き込んでくる。
「ねぇ、私知ってるんだ。昨日も仗助くんがここに来てたこと。誰目当てで来てたの？わざわざ授業中まで見に来てさ」
東方は驚きで見開いた。覗いていたことを気づかれていた。だったら、Aに暴力を加えていたことも見られていたと気付いているはず。それをわざわざこちらに公言するのは何か意図でもあるのだろうか。
「…なんであいつをいじめてるんすか」
「やっぱりあの女がらみ？はぁ…仗助くんさぁ、騙されてるんだよ」
「騙されてる？」
「何も知らないんだね。あの女は…私の親を殺したんだ」
女はそれからペラペラ喋り始めた。話が長くまとまっていなかったため自身の頭の中で女がいう話をまとめた。つまり、Aが借金取りの娘であり、そのせいで親が被害に巻き込まれたと。
「それで…報復にいじめをしてるのか」
東方の低い声に女は慌てて取ってつけるように
「私だけじゃない、皆んなAに迷惑してるの」
チラリと周りを見渡せば、クラスメイトが軽く頷いて賛同している様子があった。
異様だった。
誰もが彼女をいじめていい。それが、正しいことだと信じている。そして、被害者だと主張する女の言葉にいくつもの違和感があることが誰にも気づきかない愚かさ。
「殺されたっていうけどよ…よく聞いてみれば、あいつが殺したわけじゃない。その親が殺したってわけだろうが」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
