１６話・時間の無駄だった ページ16
親の罪は子供にも影響する。
Aの父の言葉は間違ってはいない。周囲の向ける視線がそれを教えてくれた。人殺しの子供だと軽蔑した目で。
「俺をしでかしたことは世間から見れば大罪。今更それを覆すこともできない。そして、血がつながった娘。当人でなかろうが、責めるやつはいる」
父は娘が嗚咽を漏らして涙を流し始めても眉一つ動かさない。
「それを真面目に受け入れれば苦しいだけだ。被害者側の娘に対していじめを受けて贖罪したつもりになっても何にも許されない。だったら、お前が完全にこっち側の人間として染まれば楽になれる。罰だとかなんだとか馬鹿馬鹿しい。全部、力でねじ伏せればいい。幸いそれだけの力が親の俺にある」
そこでやっと父はAの涙に対して困ったように眉を下げた。ハンカチを手に取ってその涙を拭き取ろうと手を伸ばす。きっとその手を受け入れれば最も楽な道へ行ける。
だが、Aはその手を振り払って父を睨みつけた。その態度に父は怒りを目に宿したが、ゆっくりと目を閉じて不敵な笑みを浮かべた。
「…いいだろう。なら、せいぜい足掻いてみろ。どうせお前には無理だ。ただ、殺したい。一度でもそれを思ったのなら躊躇なくいえ。お父さんが手伝ってやるさ」
Aの横を通り過ぎて立ち去った大きな背中。途端に緊張がほぐれて止めていた息を全て吐き出してはその場にうずくまった。
学校も家も何もかも取り巻く環境がすべて地獄のようだ。
「(あんたのせいで私の親は死んだんだ！)」
涙を流して私を罵倒するあの子の言葉。それは合っているようで合っていない。実際に殺害したのはAの父親。だとしても、あの子は納得してくれやしなかった。
あんな恐ろしい父にあの子が立ち向かえるはずがない。だからこそ、娘である私に怒りの矛先を向けた。
人殺しの娘
あっという間に広まったその事実は孤立へと追い込んだ。そして、いじめを仕掛けられてこちらが抵抗しないと分かれば過激していく現状。
事情を知ったら誰も味方をしてくれなくなった。
そう、爆弾のような父を抱えた自分に対して誰だって距離を置きたがる。たださえ愛想のない性格を前に出していれば、当然の如くそれを理由にして煙たがる。
「(そんな姿みてほっとけるかよ)」
東方の言葉が不意に浮かんだ。彼は自分の正義感で私を救おうとしているだけであっていざ、私が救われる人間ではないと知った時はきっと…
「時間の無駄だった」と吐き捨て目の前から去るだろう。
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
